奇跡2


「ジョージ・フォアマン対モハメド・アリ」
“Rumble in the Jungle(密林の雷鳴)”は、
74年10月30日に行なわれた。
アメリカのゴールデン・タイムに合わせ、
現地キンシャサは夜中の3時であった。
高校一年だった私は、寮でテレビを観たが、
誰もが予想したとおり、試合は最初からアリの防戦一方だった。
ロープに追い詰められ、いわゆる“サンドバッグ”状態である。
両腕で必死にブロックするも、
ボディーや顔面にヒットするパンチもあり、
KOは時間の問題のように見えた。
そんな展開が7回まで続いた後の8回、
しかしわれわれは、信じられない光景を目にすることとなる。
突然、ロープから身を翻したアリが右ストレートを放つと……


その一発でフォアマンをマットに沈めたのであった。
すべては作戦だったのだ。
これをアリは自ら、「rope a dope(ロープの麻薬)」と名付けた。
そのとおり、フォアマンは麻薬にはまったようにロープに近づき、
気がついたときにはすべてを失っていた。
すでに引退を噂されていたアリがふたたび世界統一王座についたこの試合は、
ボクシング史上に残る名勝負とされ、
「キンシャサの奇跡」と呼ばれる。


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