総括


自らを省みて理性の欠如に悩む私は、
もしもこの世に完全な理性をもった人間がいたならば、
彼(または彼女)はどんなに幸せであろうかと、
想像を巡らしたものだ。
中学・高校のとき、三年上の先輩に、それに近いようなひとがいた。
彼は、どんな数学の問題を出されても、
躊躇することなく答えを書き下したといわれる。
消しゴムを使うことがなかった。
そんな人ですら、「完全な理性」を持っているわけではもちろんない。
実際、彼も数学の新分野を開拓するために、
日々考え、悩みながら、東大教授を務めておられるのだ。
(実際、数学科の別の教授が、頭を叩きながら、
「おれはなんて馬鹿なんだ!」
と、悩んでおられたのを見たことがある)
【バガヴァッド・ギーター】第二章で、しかしクリシュナ神はアルジュナに、
理知、すなわち完全な知性にまず到達して、
それから行動することを命ずるのである。
さて、理性以上に感性の欠如に悩んできた私は、
完全な感性を持ち合わせた人はどんなに豊かであろうかと、よく想像したものだ。
しかし現実にはそんな人はいなくて、
感性の豊かな人も、さまざまな悩み・苦しみから逃れることができない。
いやむしろ、そういう人ほど、
“豊かに”悩んだり苦しんだりするようにも見える。
神々の王・インドラが肉体をもって化身したとき、
彼は地上最強の戦士アルジュナとなった。
なおかつ彼は、人間として最高度に進化した理性と感性を兼ね備えていた。
が……それでもなお、または、だからこそ、
彼は自らの行動に悩んだのである。
苦悩するアルジュナに対し、クリシュナ神は【バガヴァッド・ギーター】第二章で、
“完全な”答えを語る。
しかしアルジュナはなお、すべてを理解することができず、
第三章冒頭で、『あなたの言葉は矛盾している』と、
クリシュナ神に対して問うたのである!
それに対するクリシュナ神の答えは、
第二章を含み、それを超えて完全だった。
今回は、その後に私自身が得た新たな知見を加えながら、
これまでの全体をおさらいし、
前回、十分には解説できなかった第三章最後の数節も解説したい。
(……が、例によって、内側からいろいろな解説が次々出てきてしまったときは、
そこまでたどり着けない可能性もある<(_ _)>
いずれにしても、これまでずっと聴いてきてくださった方、
とびとびにしかおいでになれなかった方、
これからギーターの解説に来ようと思っている方、
どなたにとっても充実した時間にしたい。
ところで、12月にインドで行なわれる壮大な儀式の……


準備が進められている。
インドで、それを行ないながら、
これに参列できる人は真に幸運だと思った。
われわれの理性も感性も、否応なく進化に引き寄せてくれる
こうした儀式に参列するというのは、
やはりなにかの特別な“縁”によるのだろうとしか思えない。
だが問題は、飛行機の座席のほうだ。
12月の土・日で、飛行機の座席がとりにくい。
行くことができたが席がなかった、ということのないように、
可能性のある方は、
大陸旅遊のほうに連絡を入れておいていただければと思う。


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