イスカーナさんの奥さまが「ちあき」さんであることは、
以前より承知していた。
イスカーナさんに教えられたのではない。
聖者の書いた予言の葉を検索していて、出てきたのである。
もちろん、このちあきさんにはお目にかかったこともお声を聞いたこともないが、
人はまことに勝手なもので、
私にとって「ちあき」さんは、ある一定のイメージしか呼び起こさない。
清楚で爽やか、スキッと仕事ができて、なお優しい……
「千秋」という字も、なんて美しい……と思ったものだ。
それに比べれば、
「ジュスティーヌ」や「ディアーヌ」のほうがむしろ野暮ったくすら感じられる。
もしかしたら、「ちあき」さんは、実際に私のイメージどおりの人で、
イスカーナさんは日々、その幸せを噛みしめていながら、
サイト上で戯れておられるだけではないのかとすら想像してしまう。
マサコサマが言われるように、
「悪女」や「悪妻」という言葉があるのに対し、
「悪男」や「悪夫」という言葉がないのは、もちろん、
男や夫はみな悪いからに違いない。
ところが、＜プレマ倶楽部＞の男性たちを見るにつけ、
よくぞここまで善男善夫だけが集まられたと感嘆するほかはない。
ただし、その善男善夫たちも、倶楽部内の数の上ではまったく劣勢で、
今回の旅行も、おかげさまでいつの間にか史上最少催行人数を超えてきたものの、
男性の参加者は……
とうとうゼロだ。
かつてスリ・ランカで、
四十数名中、男性が同じ参加者のご主人さまお一人ということがあったが、
今回は記録を更新して、男性は私と、添乗員の下江のみ。
『大いなる生命と心のたび』を一年で一番楽しみな仕事と公言する下江さんは早くも、
「では、二大派閥ができますね、キキキ……」
などとまんざらでもなさそうである。
キリスト教やヴェーダの、果てしなく深遠と思われる話を二時間、三時間としても、
最後に必ず、下江さんの冗談一つですべてもっていかれる私は、
派閥の長は彼に譲り、
自分は慎ましやかな旅をしてこようと、内心想っている。
