三日間、スピーチと通訳でおおわらわだった会議が終了し、帰国の途についた。飛行機に乗ってから、この三日間に起きてきたさまざまに印象的なことが頭を駆けめぐる。ほとんどゆっくり寝る間もなかったが、昨夜はすべてが終わった後、少しだけバンコクの中心街に出かけた。昔、タイでお坊さんをしていたという日本人の青年が、連れ出してくれたのだ
バンコクの買い物天国パッポンには、タイシルク、ブランド物の時計、バッグ、衣類、サングラス(ブランド物はすべて偽物)等々、小さな屋台のようなお店が無数に並ぶ。実際に買うのは、言い値の1/3くらいか。思い切り下の値段を提示して、折り合わなければやめればいい。すると向こうは、他の店で買われるのならと、その値段を承知してくる。しかしそれでも、彼らには十分な利益があるはずだ。
屋台街のところどころに、半裸の女の子たちが躍っているクラブがあり、酒で顔を赤らめ、デレッと目を垂らした日本人のオジサンがそこここにたむろしている。ここでもう一歩踏み込んでこのオジサンたちと同じ悦楽を貪り、虚しさも感じてみなければ、本当に人間性を映すような作品は書けないのだろうか……と一瞬、思う。
偽ブランドを売り、値切り、春を売り買いし、ここには巨大な生命力の躍動がある。宗教者会議の高邁な理想は、残念ながらこの人びとの躍動感に、エネルギーとして及ばない。この欲望の坩堝を超えるだけの圧倒的な精神性を備えるのは簡単なことではなく、それは理屈をこねているようなところからは到底生まれない……などと、元お坊さんと話し合う。
国連が準備してくれた高級ホテルの周辺にも、セクシーな衣装で並んで座る女の子たちがいた。お店の名前は日本語で書いてある。そのうちの一組の一組の女の子たちにことわって、写真を撮らせてもらった。そうして、デジカメに映し出された自分たちの姿を見て、彼女らは何のくったくもなく笑ったのだった。
青山圭秀
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