【バガヴァッド・ギーター】第一章が、
『アルジュナ失意のヨーガ』と呼ばれるのに対し、
第二章は『叡智のサーンキヤ・ヨーガ』と呼ばれる。
神々の王・インドラの化身アルジュナは、
正義のために戦うべきか、愛のために戦いを放棄すべきか、
二つに一つの選択を迫られる。
人間として生まれたアルジュナの、
理性と感性、正義と愛との間に起きた葛藤……。
さて、インド哲学の6体系によれば、
われわれは理性によってこの世界を理解し、
悟りに至ることが可能なのであって、
これをサーンキヤの道という。
一方、感性によってこの世界を感じとり、
悟りに至ることも可能で、この道をヨーガという。
ところが、【バガヴァッド・ギーター】のなかでアルジュナが苦しむのは、
人間としてほとんど最高度に進化した理性と、
これ以上ないほどに深く豊かな感性との間の戦いであった。
結局のところ、【バガヴァッド・ギーター】は……
相対界に生きる以上、避け難くこうした二律背反があり、
そこから常に苦しみが生じうることを教えている。
しかしそれを超克する道もまたあると説くのであって、
第二章は、さまにそのための章といえる。
サーンキヤとヨーガの統合を説いたこの章は、
したがって『叡智のサーンキヤ・ヨーガ』と呼ばれる。
クリシュナの最初の驚くべき一言を先週の<木曜くらぶ>で解説したが、
明日はそこからさらにクリシュナの言葉を深めていくことになる。