T急ストア 1


 最近は、不況だからであろう、元旦からスーパーなどは営業しているらしい。
 今年になって初めて、近くのT急ストアに行った。あのとき、奇妙なおじさんに出くわして買わなかったタイ煎餅を無意識に探したが、もうなかった。それに代わって目を引いたのは、向かいの刺身売り場。正月で閉店が早いためか、半値から三分の一値に下がっている。
 1180円の小型伊勢海老が 400円になっているのを見て、僕はそれを手にしていた。が、そのとき、隣の人が声をかけてきた。
「これ、小さいわよねえッ!」
 たしかに見れば、尻尾の部分はカラになっていて、その分の身が掻きだしてある。「食べるところがこれだけしかないじゃないッ!」
 そう言っているのは、見知らぬオバサンだった。服装もちゃんとしている。が、この人、人が買い物してるのに、いつも隣でこんなことを言うのだろうか。その割りには、安くなった刺身をたらふく籠に入れているが……。
 だが、彼女の迫力に押されて、僕は答えていた。
「そうですね。小さいですよね〜」
 そう言って作り笑いをしながら、僕は伊勢海老を元の位置に戻したのだった。


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