学会6


手紙を出してしばらくして、稲盛さんからお返事がきた。
たいへんご無沙汰しており、久しぶりの手紙を嬉しく思いましたとの、
丁重な文面で始まっていた。
しかし、自分はこうした援助をすでに数多く行なっており、
この案件について支援できる環境にありません、とも書かれていた。
ただ、また個人的にお会いできたら大変嬉しく思いますという、
ふたたび丁重なお言葉で手紙は締めくくられていた。
稲盛さんのような方なら、
さまざまな案件で寄付や援助の依頼がひっきりなしであろう。
実際、映画監督の龍村仁さんは、
稲盛さんからの援助のおかげで、
ガイアシンフォニーの第何番かを完成したと言っておられた。
成功した実業家がこうして多大な恩恵を社会に及ぼしておられるのは、
まことに尊く、恩恵を及ぼされた方以上に、
及ぼした方にさらに大きな恩寵が及ぶことであろう。
そのような人にこうしたことを依頼するというのは甘え以外の何ものでもなく……


私は恥ずかしい思いをした。
だからと言って、
では個人的にお目にかかりましょうなどという軽々なことができようはずもなく、
話はこれで終わった。
しかし将来、もし仮に私にお金ができるような奇跡が起きれば、
稲盛さんのような使い方をしたいものだと、
お手紙を読みながら思ったものである。


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