学会4


人間、または生命というものについて、
これまでにない視点から探求しようというこの科学の発展のために、
政治家の先生方はなにもしてくれないと聞いた私は、
もちろん残念に感じていた。
が、同時に、むしろほっとするような気持ちにもなったのは事実である。
この分野が、これからの人類の文化を担う大きな柱になるであろうことは
間違いないのであるが……


しかし、どの分野の人びとも、
自分のところだけは例外扱いしてほしいと思っているのである。
農業に携わる人びとは、農業こそが産業の根幹であるのに、
このままでは日本の農業は破滅だと言われるだろう。
教育に携わる人びとは、教育こそが国の礎(いしずえ)だというのに、
このままでは日本の教育は壊滅すると言われるだろう。
防衛に携わる人びとは、
この国ほど、国民が自ら生命と財産を自ら守ろうという意識の希薄な国は他になく、
このままでは有事の際、日本自体が破滅すると言われるかもしれない。
それぞれの人びとが、それぞれに、
自分の分野が聖域だと主張する。
それらの主張をすべてそのまま聞いていては、
財政赤字の削減などできるわけがないのである。


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