『悪法もまた法なり』と言い、
悠然と毒杯をあおって死んでいったというソクラテスの話を聞いたのは、
中学3年のときの世界史の授業だった。
このとき同時に、悪妻クサンチッペの話も聞いた。
人類史上稀に見る天才ソクラテスは、
悪妻のおかげで、さらに生を、そして苦を、深く探求したという。
当時は冗談の類だと思ったが、しかし今になってみると、
それはそのとおりだろうと思わないではいられない。
仮にもし、ソクラテスが温和で控えめ、献身的な妻をもっていたら、
彼の人生も、哲学の表現のしかたも、ずいぶん違ったものになっただろう。
その意味でも、イスカーナヤマトさんはさしずめ、
“広島のソクラテス”といえるかもしれないが、
そんなことをうっかり書いていて、奥様から、
私の言い分も聞かないで、不公平! といわれたらいけないので、
他人はあまり深入りしてはいけない。
ところで、ソクラテスの哲学も、実はかなりの部分が……
悪妻として歴史に名を残したクサンチッペに負うものだった。
ヤマトさん引用の、
『とにかく結婚しなさい。
よい結婚なら幸せになれるだろうし、
悪い結婚なら哲学者になれるだろう』
という人類史に残る名言も、
遠い将来、若者たちの晩婚と人口減少に悩むことになる東洋の島国のため、
2500年前からクサンチッペが用意してくれた処方箋だ。
このように、深い思想と、未来を予測する能力に長けた彼女は、
しかし自らは歴史の表舞台に立たないようにし、夫を立てた。
……などという奇想天外な筋で、
どなたか小説でもお書きにならないだろうか。
「どうして結婚しないの?」という問いに正面から答えるのに飽きて、「私はきっといい奥さんになれませんから」と答えたら、「そんなことを心配しちゃいけない」と言われました。
TVで顔を見ない日はないほどの活躍ぶりのその方は、奥さんが何をやっても喜ばない、認めてくれない人だったからこそ、思い切ってTVに出るようになり、独立し、成功しても「こんなもんでいいか」と思わず仕事を続けてこられたのだそうです。感謝してるんですって。別れちゃったけど。
才ある男に、“いい奥さん”はいらないんだそうです。愛の対象さえあれば。甘えん坊が多いから、優しくされたらそこで止まっちゃうと仰ってました。そういうものなのでしょうか。結婚は、男は、謎です…。
先日、「何でもみてやろう」で有名な、小田実さんが亡くなられた。私も読んでいたので、新婚旅行では、アテネのパルテノン神殿は楽しみにしていた。確かにすごい。歴史の重みが、こちらに押し寄せてくるような気がした。私としては、ピラミッドより感動した。そのパルテノン神殿で、瞑想にふけって、ソクラテス等の哲学者と、会話を楽しんでいたら、「あなた、何をしてるの。人に迷惑をかけちゃあだめでしょ。団体行動をしているんですからね。」理屈はわかるんだけど、ちょっとぐらい哲学者にしてほしいよな。「とても広島のソクラテスといえない私」「間違いなくクサンチッペの家内」