宗研3


小学校3年のとき、
学級文庫に『イエス・キリスト』という本があった。
タイトルが銀色で、本体が緑色の布製だったように記憶している。
タイトルに惹かれ、すぐに読むことに決めたが、
それが、一冊のまとまった本を自分で読んだ最初だった。
このとき、イエスの生涯について一通り読んだはずなのだが、
この本の内容として今も私の記憶に残っているのは、なぜか、
イエスが洗礼を受けるシーンである。
洗礼者ヨハネは、『私のほうこそ、あなたから洗礼を……』と言うが、
イエスは、『今はこうさせておいてくれ……』と返すシーンだ。
それから以降、小学校を卒業するまで、
私は大遊びしながら暮らしていて、これといって本を読んだ記憶がない。
当時、本を読む習慣がついていれば、
私の人生も少し違ったものになっていただろうと思うが……。


ところで、小学校6年のとき、実家を離れることなく、
地元の広島大学付属中学に行ける可能性が、少しだけあった。
少しだけ、というのは、抽選の倍率が、男子は6倍もあったのだった。
実際、兄はこの抽選に受かって付属中に行き、
その後、かなり楽しげな日々を過ごしていた。
しかし、私の方はこの抽選に受からないことを、
何故か最初から知っていたような気がする。
そして、あの“キリスト教の”学校に行くのだということが、
最初から分かっていたような気がする。


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