因果11


マリナーズのハーグローブ前監督が、
いかに無能だったとはいえ、シーズン途中で突然辞任したのは、
どうしてもイチローと契約を更新したかったマリナーズ側の
“誠意”であったとみるのが妥当かもしれない。
実際、イチローがここへきて結んだという新しい契約は、
5年で9000万ドル、年俸にして22億円超だという。
「年俸500万円なら弥生時代から、
 1000万円なら平安時代からプレーしないと到達できない額」
と本人は語った。
世界中で何億人という子供が、その日食べるものがなくて亡くなっている現在、
この額をどう評価するかは人それぞれであろうが、
あの才能と、謙虚で一途な姿勢への対価としては、
まことに妥当という他ない。
実際、アメリカ企業のCEOのなかには……、


年俸で1億ドル(120億円超)という者がたまにいるし、
あまりお金があるとはいえないマリナーズと交渉を妥結することなく
FAに持ち込んでいれば、
これ以上の値がついた可能性も多分にある。
ボストンレッドソックスは、いまだ大リーグで一球も投げたことのなかった松坂に、
6年で1億ドルを投資した。
そう考えれば、イチローほど実績のある選手が、
5年で1億ドルか、それ以上とってもおかしくはない。
しかしイチロー自身は、金銭よりも、
またはヤンキースのような常勝球団に行くことよりも、
一つの球団に身を埋めることのほうに、
かっこいいという「美学」を感じたのかもしれない。


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