桑田はまた、こんなことも言っている。
「20歳のとき、25歳のとき、30歳のとき、
いつ大リーグにデビューするのも人それぞれの人生。
自分の場合は、39歳でデビューするのがよかったんです」
そう言う桑田の脳裏には、
今年一億ドルの移籍を果たした松坂の姿があったに違いない。
松坂によって西武球団にもたらされた60億円という数字は、
西武球団自体を3年間維持できるほどの金額だという。
イチローのときで15億円だったことを考えても、
この金額は破格だ。
今年前半、
打たれても打たれても味方打線が点を取り返してくれる松坂を見ていると、
因果関係など分ろうはずもないのに、
やはりよい因果が回ってきているのかと、つい思ってしまう。
こうして、日本中を沸かせた甲子園の新しいエースは、
かたや弱冠26歳で名門ボストン・レッドソックスのエースとなった。
一方……
それを横目に見ながら、満身創痍、
体力の尽きかけた39歳で大リーグデビューした桑田は、
自分の運命をどのように振り返っているだろうか。
もし、もう少し早く大リーグに行けていたら……、
もし、あの不動産投機に巻き込まれていなければ……、
という慙愧の念が、冒頭の桑田の言葉から逆に感じ取られてしまうのは、
果して私だけか。
しかしそれにしても、ここへきて、
「目標を持ち、それに向って努力するのがぼくのスタイル。
目標が達成できなくても、努力している姿が好き」
と言う桑田は清々しく、
長年憧れてきた大リーグでこれからもうひと華咲かせてくれればと、
願わないではいられない。