1992年、バブル崩壊後の日本経済は、
まるで奈落の底に落ちていくかのような勢いで崩落を続けていた。
ときの総理大臣・宮澤喜一は、この年、講演で、
これから不良債権に本格的に苦しむことになるであろう銀行に対する
公的資金の投入に言及した。
「国民経済全体のためならば……」
私などのような素人でも、そのほうがよいに違いないと思ったが、
マスコミの反応は逆だった。
「普通の会社が倒産の危機にあっても、政府は何もしない。
それなのに、銀行であれば血税を投入するのか。
バブルを創り出し、
多くの人びとに無理やりカネを貸し出し、
日本全体を塗炭の苦しみに追い込んだ張本人に……」
マスコミの論調も、もっともといえばもっともだったかもしれない。
だが、背に腹を代えられるのか。
このときに公的資金を入れていれば、
不良債権処理に必要な額は……
5〜6兆円程度で済んだだろうといわれている。
しかし、マスコミの袋叩きにあった宮澤はこの案を撤回、
わが国はこの後、十数年にも渡る大不況に突入していく。
政治家の考えることは何でも悪だという、
マスコミ主導による衆愚政治の典型である。