第三回 〜パリ・ルルド・ヌヴェール〜 五日目


 聖女ベルナデッタは、ルルドで聖母の出現を受けた後、遠くヌヴェールの修道院へと旅立っていく。そこが、持参金無しで受け入れてくれた唯一の修道院だった。
 現在、パリから車で三時間のこの場所に、私は一番来てみたかった。
 聖堂に入ると、いきなり祭壇右手に聖女ベルナデッタのご遺体。亡くなって30年後に掘り起こしても、何ら損傷のなかったという奇跡のご遺体が、今、目の前にある。
 ちょうど正午のミサの時間だったので、全員でこれに与る。修道女と巡礼者らによる、あまりに美しい聖歌とミサ。フランス人司祭は、日本人一人ひとりの頭に手を置き、特別な祝福を与えてくれた。何人かの女性は、ミサ後も聖女の遺体の前を離れようとしない。
 この修道院には、なんと日本人のシスターが二人もいて、昼食後、ベルナデッタゆかりの場所に案内してくれる。聖女が最初にくぐった門、話した聖堂、祈りに来た聖母像、亡くなった部屋、遺体が何十年も埋葬されていた小聖堂・・・・・・。
『私は一瞬も、愛さないでは生きられない』
 そう言って死んでいった聖女の息づかいが、感じられる。
「私はもう一度、ルルドに行かなければ日本に帰れない」
 参加者の一人がそう言い出したのは、この日の夜のことだった。

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眠り続ける聖女ベルナデッタ


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