“正統”にまつわる問題は、決して他人ごとではなく、
われわれ日本国民にとっても常に身近にある。
『前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない』
いわずと知れた、日本国憲法第9条・第二項である。
ここに明らかに、『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』
と書かれている。
しかしそれと同様に明らかなことは、わが国に存在する陸上・海上・航空自衛隊は、
名前はどうあれ、陸海空軍であり、戦力であることだ。
そして、特に物騒な昨今、国民のほとんどは、その必要性を感じている。
『主権は国民に存する』と憲法は規定しているので、
国民が今の状態でよいといえば、それでよいのかもしれない。
しかし憲法上、はっきりと否定されているものが存在してよいのかどうか、
そのものの存在を定め、
そのありようをさまざまに規定する多数の法律の正統性はどのように保証されるのか、
憲法で否定しているものを、
それよりも下位である通常の法律が肯定することが可能なのか、
憲法により規定された国政選挙により選出された議員が、
憲法に反する法律を国会で通せばどうなるのか、
あるいは、選挙そのものが“違憲状態”であったり“違憲”であったりしたとき……
その選挙によって選ばれた議員が制定した法律は有効なのかどうなのか等々……、
私のような頭の悪い者には一向に分からない。
私も一貫して、自衛隊は9条違反論者であった。しかし、歳を取るごとに、ゆらいでいる。・・・・・・これぞまさしく・・・「理性のゆらぎ」である。