運気 6


昔、いずれ劣らぬ剣の達人が二人いた。いずれも、いまだ負けたことがない。
ではこの二人、どちらが本当に強いのか、皆がそれを知りたがり、将軍のお声掛かりでついに雌雄を決するときがきた。
御前で向かい合い、いざ、始め! の声がすると、二人とも動かない。1分、2分と時間がたつ。どちらからも仕掛けようとはしない。さらに一分、二分が経ち、将軍は隣の指南役に言った。
「一体、どうなっておるのか」
指南役は言った。
「実力があまりに伯仲しているのです。少しでも下手に動き、スキを見せたほうが負けます。両者とも、その瞬間を待っているのです」
結局、両雄動かぬまま、試合は引き分けとなった。
この話を思い出させるほど、ゴングが鳴ってから、両者とも最初、大きな動きがなかった。やはり、実力が伯仲しているのだ。こういう場合ほど、見ているほうは緊張する。


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