勝負 3


リングに登場するマヌーフを見ながら、私は、この戦績と形容が決して大袈裟ではなかろうことを感じていた。体は究極まで引き締まり、生気に満ちあふれている。一つひとつの仕種も静かで、自信に満ちている。
もちろん、そうした点においては大山君も人後に落ちない。だんだん体がなまってくるのが素人目にも分かる多くの“格闘家”と違い、彼はストイックなまでに日頃の鍛練を怠らない。果して、この二人のどちらが強いのか、見ているこちらが極度の緊張に見舞われていた。
試合が始まると、案の定、マヌーフの動きは速く、なかなか捕まえさせてくれなかった。開始後1分、やっと捕まえてマットに倒したと思ったら、なんとマヌーフのほうが上になっている。
その状態からはすぐに抜け出したが、マヌーフがラッシュを仕掛けた。ほとんどのパンチを大山君はブロックし、または紙一重でかわしたが、パンチは素人には見えないくらい速い。
会場のあちこちからは、「大山っ!」「峻護っ!」と声が飛び、気づいてみるとそのうちの一人は、普段は優しげなMさんだった。


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