聖夜 1


世界中が聖なる夜を祝うこの日、社会全体の状況も神聖かつ幸せ、というふうには必ずしも見えない。
世界にあまりに多くの不正や不幸があるのは言うまでもないが、豊かな国日本でも降って湧いたかのような耐震偽装問題が世情を賑わしている。
しかしある知人は、そんなことがあるのは“当たり前”だと私に言った。普通にやっていたのでは利益なんか出ないんだ。だから手を抜けそうなところは思い切り手を抜く。たまたま今回の場合は派手に法令の一線を超えたものだから目立っただけだというのである。
そうは言ってもなお、この問題はある種、運の悪い人のことだと心のどこかで思っていた。
ところがここへきて、友人の一人が打ち明けてくれた。自分が住んでいるマンションが、まさにこの偽装物件であったのだと。最近、何かもの思っているようには感じていたが、彼はなかなかそのことを打ち明けてはくれなかった。余計な心配をさせまいと思ったのに違いない。
だが、そうした物件はこれからまだまだ判明するだろうし、その他の種類の不正もまた、至るところで判明していくに違いない。


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