第十回 〜ローマ・アッシジ・メジェゴリエ〜 十一日目


ザグレブからミュンヘン、そして成田へ。着いてしまうまで、気を抜けなかった。
後に知ったところでは、あの日、やはりクロアチア航空は飛ばなかったという。あのとき、もし決断できなかったら……もしバスが調達できなかったら……ドライバーがいなかったら……。
アンコーナの港に続き、われわれは過去10回の旅行のなかで最大の危機を二度、切り抜けたのだった。
実はアンコーナでも、港で待っていた美しいクロアチア女性が出国や乗船手続きを素早く処理してくれ、ぎりぎりで間に合った。そのときの彼女の緊迫した表情が、事態が真に深刻であることを物語っていた。
そして今回も、一人の女性がわれわれを救ってくれた。
「あれは二人とも、マリア様が遣わしてくれたんですね〜」
そう言った下江添乗員は、嬉しそうにこう続けた。
「二人とも、きれいな人でしたからね〜〜」
「じゃあ、『聖家族の家』で現れたあの謎の男はなんだったんです?」
実際、突然現れてわれわれを『聖家族の家』に導き、日本語の小冊子をくれて別れたあの男が何だったのかは、いまだに分からない。そして実際、彼がいなければ、われわれは『聖家族の家』を充分には巡礼できなかっただろう。あるいは、船に乗り遅れていたか……。
「ん〜〜、あれは〜、多分地元のガイドさんなんじゃないでしょうか。お客さんをつかまえて、最後ガイド料をとるんでしょう」
同じようなことをしても、美人は「マリア様の遣い」で、男はただのガイドか……。だが、彼はガイド料などとは少しも口にしなかった。
「私たちがあんまり無邪気に感謝したものだから、彼、言い出せなくなったのかもしれませんね」
そうだろうか。そうなのかもしれない。しかし、たとえそうであったとしても、彼もまた、聖母がこの旅のために遣わしてくれた人だったに違いないと、私は思った。
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この日は
「聖なる御助けの聖母」
の祝日だった
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スプリットの朝市
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聖なる神父と
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深夜の聖体礼拝
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古都を行く怪しい人々
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メジュゴリエの聖母2
(聖ジェームス教会)
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メジュゴリエの聖母3


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