第十回 〜ローマ・アッシジ・メジェゴリエ〜 八日目


ザグレブとのやりとりで、幸い、新しい高速道路が完成し、所要時間は大幅に短縮できることが分かった。高速は、なんと4日前に完成したのだという。
「バスは調達できるんですか?」
「決断すれば、40分ほどで到着できるように手配してくれています」
それもザグレブの秋山さんがやってくれていた。だが、すでに空港待機が6時間を超え、皆、疲れていた。できれば飛行機で移動したい。依然、クロアチア航空は飛ばすと言っているらしい。しかし、もし飛んで来なかったら……という堂々巡りが続く。
「9時半の最終情報を待って、決断しましょう」
そう言っていたものの、その最終情報が来ない。10時、10時半と時間が過ぎ、最後に届いた情報は、飛ぶかどうかは分からない、というものだった。こうしてわれわれは、バスでザグレブに移動することを決めた。
皆さんに事情を説明して搭乗券を集め、航空会社に一旦出した荷物を回収してもらう。水を買っておいてください、お手洗いに行っておいてください……と注意を重ねる。
通常のツアーならここで、「一体どうなってるんだ!」「なんとかしろ!」などと罵声が飛ぶところらしい。いや、その前の段階で飛んでいる。
ところが、皆さんときたら、「ご苦労さまです」「お疲れではないですか」と逆に声をかけてくださる。そのような反応に、私も、下江添乗員も、涙がでそうになる。
そうこうしているうちに、バスが来たものの、今度は荷物がなかなか出て来ない。やっと出てきた荷物をバスに詰め込んだとき、すでに夜中の12時を回っていた。
本当に飛行機は飛ばないのだろうか……という疑念が、心のどこかで湧く。しかし今は、とにかく出発するしかない。
出発してすぐ、私は思わずマイクを持った。
スベトザール神父も、巡礼においては日常の利便性や快適性をすべて犠牲にするのだと言っておられた。それと引き換えに、われわれは神に向うのだと。
同じように、肉体をもつことできわめて不自由な状態にあるわれわれは、人生という名の巡礼をする。そうして徐々に意識を進化させていく……。
短い話を終えてから、皆さんにリラックスしていただけるよう『冬のソナタ』オリジナル・サウンドトラックのテープをかけた。音量を確かめようと後方の席に移動してみると、すでにほとんどの方が眠っておられる。皆、疲れていた。
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ローマの風景
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聖なるイコンの解説
(はるか後ろがその本物)


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