学会 4


薬を一切使わず、宣伝も何もせず、医学の王道を行こうとするE医師。それで一日、何人くらいの患者さんが来るのだろうか。そういう医師を慕って、意外と医院は大繁盛しているかもしれない。
その疑問に対し、E医師は胸を張った。
「一日何人? いやいや、週何人と聞いてください」
「……」
聞けば、本当に患者さんは週何人、ということらしい。そうして、その何人かに、短ければ一人7時間、長いと一人12時間ほどもかけて初診をする。
まさに現代版赤髭を目の前にして、私はつい、余計なことを言ってしまった。
「それにしても先生、よく立派に妻子を養ってこられましたね」
この質問に、思わずのけ反るE医師。
「いや〜〜、それを聞かないでよ」
実は、彼の家族は立派な医者一族なのである。そのなかで、彼は自らの理想の医療を追求するあまり、実家と袂を分かった。
それは、口で言うほどたやすい道ではなかったに違いない。そして、忍耐強い奥様があればこそであった。


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