『新法王4』に書いたように、司祭でない者が法王になる可能性は、教会法上あり得なくはないものの、しかし現代ではまったく考えられない。
司祭でなくして法王となったイノセント3世には、政治家としての側面があったようだ。彼は盛んに十字軍を派兵し、異教徒と異端の制圧に向かわせた。とりわけ、異端カタリ派に対する弾圧は苛烈を極め、カタリ派信徒の多くは正統派カトリックへ改宗……したのではなく、殺された。
その一方で、フランシスコ会の修道士たちは、自分たちで教会堂を再建し、貧者を助けるなどの活動を地道に続けていた。フランシスコ会やドミニコ会を認可することで、イノセント3世は教会に新しい風を吹き込んだという功績もある。
平信徒が突然法王になるのは無理だろうが、民間人が知事や首相になったりすることがあったほうが、社会は活気を呈していいかもしれないと思うことがある。しかし、彼らが期待外れに終わったときには落差も大きく、イメージ的なこと以上に実質的に社会が失うものもまた計り知れないことを、覚悟しておくべきである。
世界史で習った
十字軍遠征路