547年に聖ベネディクトが亡くなった後、575年に選出された新法王は、聖者の徳を慕って早くもベネディクト1世を名乗っている。その後、歴史上、幾多のベネディクト法王が誕生したが、近年、記憶に残るのはベネディクト15世である。
ジェノヴァの出身の貴族であった彼は、幼少時より病弱で、体型も普通ではなかった。いつも片足をひきずって歩きながら、しかし人びとの福祉に大きな関心を寄せた。ボローニャ大司教、バチカン国務長官を経て1914年、法王に選出された。
ときあたかも、第一次世界大戦が勃発した直後であった。法王庁は、59歳の若さにして慈愛に満ちた新法王に、和平への願いを込めたに違いない。
実際、ベネディクト15世は、大戦時、和平案を提案するなど積極的に平和外交を推進したが、複雑に絡む列強の思惑のなか、それらが評価されることはほとんどなかった。こうして大戦が泥沼化した1917年、ファティマに聖母マリアがご出現になった。
聖母は、「来年の暮れまでには戦争は終わります」と預言した。実際、大戦は翌18年11月に終結した。が、同時に、聖母はこうも言われた。
「もし人類が悔い改めなければ、ピオ11世の世の終わりに、もっと大きな戦争が始まります」
ベネディクト15世