復活 7


心優しい彼は、その場にいることのできなかった私に電話をくれた。
「先生、実は不思議なことが起きたんです」
彼は開口一番、そう言った。
「花道に立ったとき、暖かいものがどこからともなく降りてきて、自分を包んでくれたんです」
その暖かい“何か”は、どんなことがあっても自分は大丈夫なんだという確証を、彼に与えてくれたという。
「リングに立ったとき、まったく冷静でいる自分がいました。本当に不思議でした」
実は、彼は試合直前、練習中に脇腹を痛めていた。当然、試合はキャンセルできない。
苛立ち、不安に苛まれそうなものなのに、習ったばかりの瞑想に毎日浸り、試合前にも控室で瞑想をしたという。そうして花道に立ったとき、“それ”が降りてきたのである。
「先生と、皆さんの祈りが届いたんです」
どこまでも謙虚な彼はそう言った。そうかもしれない。祈りは届くのだ。
しかしもちろん、この勝利は、彼の努力と忍耐による。そうして、度重なる怪我に泣かされてきた一人の格闘家が、文字通り、この夜復活した。


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