座長 4


記憶をたどってみると、たしかにそうだった。
三年ほど前の冬、インドから帰った翌日、たまったFaxを整理していると、ベストセラー『神々の指紋』の訳で知られる翻訳家・大地舜さんのセミナーのご招待状があった。見れば日付けは当日で、返答の締め切りはとっくに過ぎていた。が、それでも電話してみると、意外にもお待ちしていますという返事が返ってきた。
その夜、セミナーの間に私はインド文化に関する発言をしたが、たまたまこれを前の席で聞いていたのがY君だった。私の読者でもあった彼は、国際生命情報科学会の事務局を兼任しており、研究室に遊びに来るよう誘ってくれた。
それから芋づる式に、国会議員で構成する『人間サイエンスの会』や、国際生命情報科学会での講演が決まっていき、未知の領域の研究……ならぬ、未知の領域の人びとにも出会うこととなっていった。人と人との出会いとは、常にそうしたものである。
そんなことを思い返していると、Y君は果物を頬張りながら、嬉しそうに言った。
「あの会でお会いしたのが、先生の運の尽きでした……」


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