座長 5


懇親会の後、今度は佐古曜一郎さんが待っていた。佐古さんは、かつてソニーの井深さんの肝入りで始まったエスパー研の室長で、何冊かの著書もある。冬には半袖のTシャツで、夏には長袖のセーターで学会に現れるのは、エスパー(超人)研究の賜物だという説を聞いた。
彼はまた、アルコール飲料の研究家でもあり、獲物を捕捉しては二次会、三次会へと送り込む。お酒の飲めない私は餌食にならないようにと心がけたが、彼に腕をひっつかまれて、何年ぶりかの飲み屋に入った。
そこにはすでに、韓国の研究者や中国からの学者もいて、日本料理と日本酒をいただきながら、英語で冗談を言い合っていた。
中国人の学者さんは気功の話で盛り上がり、まだあどけなさの残る韓国の女子大生は、「ヨンサマ(と彼女は言った)はあまりスキじゃない。イ・ビョンホンのほうがいい」などと語り、合間あいまに科学や哲学論が交わされている。
幸せかもしれない……そう思った。政治のレベルではぎくしゃくしている国の学者たちとも、下らない冗談を言い合うような場が持てる。それに何より、自由に科学ができる。
人類の歴史上、それほどなかったに違いない、このような幸せな時代がいつまでも続いたらいい。(座長は大変だったが……。)そんなことを思う、二日間の学会だった。


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