今は亡き佐々木幸枝のことを想うとき、この世界の不条理に思いを馳せずにはいられない。人を思いやる心根に厚く、慎ましやかだった彼女は、若くしてガンに冒された。ガンは現在、日本人の死因の第一位であり、かつその苦しみは筆舌に尽くし難い。
そのような病気に対しては、西洋医学も東洋医学も決定打を持たない。私は主として東洋医学の立場に立ちながら、こうした問題に取り組んできたが、西洋医学のなかにも注目すべき療法がいくつか見受けられる。そのうちの一つが、免疫療法である。
実はわれわれの細胞は、常にガン化し続けている。すなわち、人体のなかで何十兆かある細胞のうちのある程度の割合のものは、あるいは紫外線の攻撃をうけ、あるいは活性酸素の攻撃を受けながら、常にガン化しているのである。
それなのにわれわれの多くがガンを発症しないのは、これを修復する機能が細胞に組み込まれているからだ。そしてその力を左右しているのが、言うまでもなく免疫である。
免疫力を高めることができれば、われわれはあらゆる疾病に打ち勝つことができるといっても過言ではない。そして、数ある免疫療法のうち、私が注目しているものの一つは、Immunocell BRM-activated Killer Therapy (免疫細胞BAK療法)と呼ばれるものである。
この方法を開発した海老名卓三郎博士は、かつてアインシュタインが来日したときに通訳をされた日下部四郎太博士の孫に当たられる。海老名先生とは、日本の統合医学会の元締めである渥美和彦・東京大学名誉教授に紹介され知り合ったが、拙著を読まれた海老名先生は、「祖父はあなたと同じように哲学が好きな物理学者でしたよ」と言われた。しかし先生自身が、哲学・宗教にきわめて深い関心を持っておられる。
ガンに対する切除、放射線、抗ガン剤のような破壊的療法は、他の細胞にも同時に破壊的だ。そうではない、より自然で優しい方法を模索する海老名先生の研究のために、<プレマ倶楽部>はささやかな研究資金を寄贈した。
青山圭秀
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