裕福な家庭に生まれ、賢く、誰からも愛されたテレジアに比べると、ベルナデッタは極貧で、読み書きもできず、皆に罵倒されながら育っている。
「なぜ、あなたのような愚鈍な人に、聖母は現れたのですか?」
このような質問に、彼女はこう答えた。「私よりも愚鈍な者がいたら、聖母はその人にお現れになったでしょう」
ベルナデッタは、その後ヌヴェール愛徳修道会に入り、短い生涯を終えた。遺体はじめじめした地下聖堂に埋葬されたが腐敗せず、精神の、物質に対する優位を指し示しているかのようだ。
昨年お会いしたシスター川田は、今年もお元気で、われわれを迎えてくれた。巡礼を終えてから、シスターと少しの間、おしゃべりをする。「修道院に入られて、一番嬉しかったことは何ですか?」
この問いに、シスターはゆっくりと答えられた。「一日のなかで、静かに神様と向かい合う時間を持たせてもらえること、これにまさる歓びはありません……」
(クリックで画像拡大)
聖女の眠っていた
小聖堂より
この日のフライトは、夜の11時25分。この後ポルトガルに向う私は、パリの空港で皆さんを見送らねばならない。
一緒に日本に帰りたいと、どんなに思ったことだろう。だが、それはできない。次の旅行や、その次の旅行で、皆さんに来てよかったと思っていただけるためにも、もうしばらくヨーロッパに留まって学び、研究することがある。
なんとか、そう思い定めようとした。が、一人の方が目を濡らし、しばたたかせるのを見たとき、私も思わず涙がこぼれそうになった。
お疲れさまでした