第九回 〜ルルド モン・サン・ミシェル リジュー〜 八日目


 裕福な家庭に生まれ、賢く、誰からも愛されたテレジアに比べると、ベルナデッタは極貧で、読み書きもできず、皆に罵倒されながら育っている。
「なぜ、あなたのような愚鈍な人に、聖母は現れたのですか?」
  このような質問に、彼女はこう答えた。「私よりも愚鈍な者がいたら、聖母はその人にお現れになったでしょう」
  ベルナデッタは、その後ヌヴェール愛徳修道会に入り、短い生涯を終えた。遺体はじめじめした地下聖堂に埋葬されたが腐敗せず、精神の、物質に対する優位を指し示しているかのようだ。
  昨年お会いしたシスター川田は、今年もお元気で、われわれを迎えてくれた。巡礼を終えてから、シスターと少しの間、おしゃべりをする。「修道院に入られて、一番嬉しかったことは何ですか?」
  この問いに、シスターはゆっくりと答えられた。「一日のなかで、静かに神様と向かい合う時間を持たせてもらえること、これにまさる歓びはありません……」
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最後の力説
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シスター川田と
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聖女の眠っていた
小聖堂より
 
この日のフライトは、夜の11時25分。この後ポルトガルに向う私は、パリの空港で皆さんを見送らねばならない。
 一緒に日本に帰りたいと、どんなに思ったことだろう。だが、それはできない。次の旅行や、その次の旅行で、皆さんに来てよかったと思っていただけるためにも、もうしばらくヨーロッパに留まって学び、研究することがある。
 なんとか、そう思い定めようとした。が、一人の方が目を濡らし、しばたたかせるのを見たとき、私も思わず涙がこぼれそうになった。
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最後の絶叫
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お疲れさまでした


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