サムライ 1


 真田広之さんのことを、長い間、ぼくは身体能力系の俳優さんだと思っていた。ところが、NHK大河ドラマ『太平記』の、特に最後の数回、足利尊氏役できわめて重厚な演技を見せられ、ひどく印象づけられたのを覚えている。その後、ある女優さんと噂になったときも、言い訳一つすることなく沈黙を守り通した姿が、さらに印象的だった。
 あるとき、見たことのある名前の方から、手紙を受け取った。差出人のところには、サインペンで小ぎれいな字で渡辺謙と書かれている。共演者の方に紹介されて本を読んでくれた謙さんが、感想をくださったのだった。その真摯な手紙にお返事を書き、などしているうちに、ロケ先からその共演の方と電話してきてこられたりして、東京に帰ったらひとつそばでも……、という話になった。謙さんは、無類のそば好きだった。
 こうして、日本人の俳優さんのなかで、好きな人が二人になった。そして、その二人が共演した映画が昨年から今年にかけて話題になった。謙さんは、この映画のためにロサンゼルスに一年近く移り住み、英語を磨いたという。


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