サムライ 5


 (映画を観た方だけの番外編)
 映画の主題はもちろん、日本のサムライ魂であるが、武士を戦場に送り出すのは女である。この映画では、小雪という女優さんがその生きざまを一手に表現するという、うまみのある役所だったが、残念ながらこちらの演技は秀逸とまではいかなかった。女の心理の移り変わりが、うまく演じきれていないように感じられる。役柄として、オーバーな表現ができるわけでもなく、やはり芝居は難しい。
 最後、戦場におもむくトム・クルーズと一瞬、唇を交わすシーンがあるが、すぐに離れてくれたのには胸をなで下ろした。あそこであれ以上のシーンがあったら、それは違う。武家の女ではなくなっていただろう。
 その前の晩、一瞬、雰囲気をかもし出しておきながら、すぐに襖を閉じるシーンがあった。何かが起きるのならこの場面のほうがむしろ自然で、出陣の直前はただただ厳粛であってほしかった気もする。が、監督・脚本はすべてを出陣前に持ってきたかったのだろう。そのあたりは、やはり国民性の違いか……。
 そうして、すべてが終わった後で、トム・クルーズがふたたび村に戻る場面がある。最後の泣かせるシーン。表情で、あるいは目線だけで、心のたけを表現しなければならない場面だが、ここでも、やはり彼女の気持ちが充分に伝わってこなかったのは、こちらが鈍感なのか。女優として、これ以上おいしい場面はないと思うのだが……。 


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