月の魔力 3


 満月の日に死ぬ人、殺される人が多ければ、生まれる人もまた多いらしい。
 満月の日にはお産が多いというのは、産婆さんたちの間でささやかれてきたことだが、今日では統計的データとして示されている。『月の魔力』(東京書籍)という本を訳された数学者の藤原正彦さんも、訳すだけでは飽き足らず、実際に調査をされた。
 藤原さんは、投薬や帝王切開などの不自然な出産形態がなるべく少ない助産院からのみ、実に2531例という出産記録を集め、統計処理をほどこしたところ、たしかに出産と月齢との間に相関が見いだされたという。歯科領域では、満月の日に抜歯をすると出血異常が多いといわれ、それもどうやら事実らしい。
 考えてみれば、月は、あの巨大な海洋に作用して潮の満干を引き起こす。女性の体も月の周期と密接に関係しているのだから、男性にも同様のことがあっておかしくはない。


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