妃殿下 6


 イベントは、大いに盛り上がった。こんなとき、ぼくはつくづく思う。組織には、中心となる人物がいるだろう。イベントには、オーガナイザーがいるだろう。だが、このようなイベントを成功させる力は、本当は、プログラムに名前も出ないようなボランティアのかたから来る。遠方から飛行機や列車で来てくれる、一般の方の純な気持ちから来る。
 この日、われわれは高松を離れ、広島県庁に向かった。
 人類最初の被爆体験をした広島は、改善の兆しを見せない今日の世界情勢を憂え、国際的な平和貢献の道を探っている。その一環として、いまだ内戦の傷が癒えないカンボジアの復興支援をしていこうというプロジェクトが数年前に立ち上がった。
 行ってみると、県庁の人たちや、それを支える学者・有識者の皆さんの真剣さが伝わってきた。ぼくは密かに、広島県民であることを誇りに感じていた。
 妃殿下は言われた。
「私にとって大事なのは、どの政党が選挙に勝ち、どの政党が政権を取り、といったことではありません。カンボジアの国民が、尊厳をもって自分の力で生活していけるような、そんな国に早くなってほしい。それだけが私の願いなのです」


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