叙勲 1


 映画監督の伊藤俊也さんが紫綬褒章を受けられたので、お祝いの席に行ってきた。 『奇跡の人』『誘拐報道』『白蛇抄』『プライド ──運命の瞬間──』など、人間性の哀しみをえぐり出す話題作を次々と世に問われてきた方である。
 予想どおり、東京プリンスの大広間は人、人、人でいっぱいで、映画会社の偉い人 たちや俳優さん、女優さんたちが次々と壇上に上がってスピーチをする。その様を見 ながら、昔、東京に出てきたばかりの頃のことを思い出した。
 そのとき、駒場の商店街で、たまたまロケ中の三浦友和を見たのだ。地方にいて、 テレビだけで見ることのできた俳優が突然目の前に現れたとき、18だったぼくは、 正直、ちょっと幻惑されるような気分になったのだった。 


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