かつて修験者が踏みしめ、今もそうであろう参道を、僕は革靴で登った。この頃には、予報通りの大雪となり、山全体が真っ白に変わっていった。
雪をかぶった深山の木々と、厚い雲の下に舞う粉雪。こんな風景を、東京にいて見ることができるだろうか……。そう思いながら、僕はふと、式が終わったときのことを思い出していた。新郎新婦が聖堂を出たとき、ちょうど時を見計らったかのように、この日唯一の晴れ間が顔をのぞかせたのだ。
不思議だった。後で聞くと、大荒れになるという予報だったのに、新婦だけは、「私たちが聖堂を出るときには、必ず晴れるわ」と断言していたというのである。一方、新郎は、--すでにあれほどの“奇跡”を見せられていたのであったが--「もしこれで、聖堂を出るときに晴れていたら、マリア様もサイババ様も信じますから、晴れるようにしてください」と祈っていたという。
この愛すべき夫婦に祝福がありますようにと、雪の山寺で僕は祈った。
陽が暮れても降り続く雪