大正6年生まれの父は、今年6月、95歳の誕生日を迎えたが、
贈り物が届いたはずなのに、特に何の反応もなかったため、
どうしたのだろうと思っていた。
そのころ、父が体調を悪化させ、
それどころではなかったことを知ったのは、ずっと後になってからだ。
そんなとき、わが家の人間は、何も言わない。
家族に心配をかけるのが嫌なのだ。
いわゆる仲のよい家族を構成しておられる皆さんからは、
「家族って、そんなもんじゃないでしょう?」と言われるのは分かりきっているが……
しかしそれは、どうにも変えることのできない、わが家のDNAのようなものだ。
私も、中学の寮に入って苦しい日々を送り、東京に出てきても同様だったが、
そんなことは家族の誰にも言わなかった。
親しくなればなるほど、そのように接するきらいがあるので、
今まで多くの、親しい友人に迷惑をかけ、申し訳なかったと思っている