マダムと肋骨 6


骨折後、確かにゆったりしていたわけではなかった。
いつも重そうに見えるリュックを持ってはいる。
しかし、少々無理をしたり、リュックを持っているからと言って、
二本目が折れるわけでもないだろう。
そう思ったが、しかしこの医師の無邪気で人のよいさまや、
ひょっとして本当は重いんじゃないかとリュックを持ち上げてみる看護師の素直さは、
あらゆる論理を差し挟む余地を与えず、私を包み込むに充分だった。
そして秘かに納得もした。
こんなふうだから、お年寄りの患者さんがたくさんくるのだと。
タイ旅行を目前に控え、
こうして傷口は、むしろ拡大したかのように見える。
しかし、大丈夫だ。
タイの仏たちが私たちを待ってくれている。
そう、そうに決まっている。
その証拠に、医師が「アレ、二カ所折れてたんだ……」と声を挙げたとき、
私が唖然としていると、周囲に付き従っている看護師の皆さんが、
--全員が年輩の女性であるが--
一斉に私のほうを見て微笑んだのであった。
少なくとも私には、そう見えた。
ずらりと並んだその笑顔を見たとき……


SHOさんが待ち望んでいた、今回の新シリーズのタイトルが決まったのだった。


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