聖者の世界 3


 二十世紀の聖痕者として有名なピオ神父であるが、しかし、彼の奇跡を調べていくとそれがほとんど無尽蔵であることが分かる。
 たとえば、彼は同時に数カ所に現われて信者の病を癒し、訪れてくる人の心を読み、本人すらも忘れている過去を指摘した。死者の訪問をしばしば受け、彼らに乞われてミサを立てた。
 習ったことのない外国語の手紙が読める理由を問われて、神父は、「守護の天使が教えてくれるから」と答えている。彼はまた、聖母マリアやイエスと普通に話し、大人になるまで、通常の人間がイエスやマリアと話せないことを知らなかった。神父が話すイタリア語は、訪れてきた信者にはその母国語で聞こえたりもした。
 出発の日は迫ってきたが、調べれば調べるほど、膨大な量の情報が湧いてくる。その上、例によって野暮用が片づかない。
 夜中の10時頃、やっと旅の支度に取りかかる。少し寝たほうがいいと思って、仮眠をとり、朝の4時におきてまた準備。
 車は8時に迎えに来るが、しかし、ピオ神父に関するビデオを見始めた僕は、画面の前を離れることができなかった。車を待たせ、これ以上遅れたら遅刻するという時になってやっと、一大決心をしてテレビを消したのだった。


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