第三回 〜パリ・ルルド・ヌヴェール〜 四日目


 ルルドを発つ日の朝、ツアーの中の何人かの人が、6時前に洞窟で祈っていた。水筒やペットボトルに水を詰め、名残を惜しむ。
「もう一日、ルルドにいたい!」との声にもひるまず、鬼の下江は全員をTGVへ押し込む。車内でとった昼食のサンドイッチも、なかなかの美味。だが大き過ぎて、誰も食べきれない。
 ふたたび、パリ。不思議のメダイを聖母マリアから授かったカトリーヌ・ラブレーの愛徳姉妹会を訪ねるのが、この日のメインである。パリの街はセーヌ川左岸のデパート、モン・マルシェ近くに修道院はあった。
 カトリーヌの腐敗しなかった遺体を拝み、全員が祈りに浸る。この修道院も、車椅子の人が多い。メダイによる奇跡を、みな内心期待している。
 すぐ近くには、愛徳姉妹会を創立した聖ヴァンサン・ド・ポールの遺体を収めた教会もあるが、こちらは閑散としていた。聖人として、どちらが偉かったとは甲乙付け難い。が、人気のあるなしは、厳然として存在する。
 その後、われわれはパリの街を一望する丘のサクレ・クール寺院へ。が、周りで開業している画家たちを一回りする間に、一行のうちの二人が行方不明になる。汗みどろの捜索の甲斐あって、三〇分後、下江さんが二人を連れてバスに戻ると、期せずして全員から拍手が。ちょっと恥ずかしそうにするAさんとKさん。恋人同士で参加の彼らには、二人だけの時間が必要だったのか……。
 天候不順のパリは、この日は快晴。「マリア様の恵みだ」とばかりに、下江さん、全員をシャンゼリゼ見学に連れて行くと言い出す。夕食後、地下鉄に乗ってまず出たのはアルマ橋。日本でもさんざん紹介された、ダイアナ元妃最期の場所である。すかさず、品のない冗談を繰り出すムッシュー下江。そうして程なくして、天気は一転、雷雨に見舞われる。目の前にあるはずの凱旋門もほとんど見えなくなるほどの激しい雨に、ムッシュー下江がつぶやく。
「ダイアナさんに祟られたらしい……」
000726

祈りを捧げる人々。
マリア像の下には
聖女カトリーヌ・ラブレーの
ご遺体が見える。


カテゴリー: 大いなる生命とこころの旅 パーマリンク

コメントを残す