先輩 2

生命の科学アーユルヴェーダは、最も深い部分において、人の生まれもった体質や気質は生涯変わらないという。だが、かつて大木神父はよくこんなふうに言っていた。
「君たちは、この学校の教育から特に大きな影響を受けたと感じないかもしれない。
 しかしこの六年間の教育は、君たちに深い影響を与えている。
 社会のどの分野に進むにせよ、君たちは弱い人たち、
 恵まれない人たちのために生きるという、そういう使命を帯びている」
まことに眩しく、ほとんど正視することのできない神父の言葉だ。だが、おそらくこの両方に真実があるのだろうと、私は思う。
こうして、ちょっとしたニュース報道から、かつての中学・高校時代の記憶がふつふつと沸いてきたりする。
よいことだけならよかったが、よくないこともいっぱいあった。若い、多感な時代とて、互いに誤解したまま赦しあうことなく卒業の日を迎え、そのままになってしまっている友人もいる。だが、今になってみれば、そうしたことを経験しながら、少しずつではあるが人は進歩していることが分かる。
だから、今現在起きてきていることも、よいこと悪いことすべて併せ、進化のために自然界が起こしてくれている。そうとしか解釈できない。

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先輩 1

30年前、高校の寮で同室になり、お世話になった先輩の顔を突然、テレビのニュースで見た。定期的なたん吸引が必要であることを理由に、東京都大和市の青木鈴花ちゃん(6)が保育園への入園を拒否されたことに対する裁判で、
「市町村には児童が心身ともに健やかに育成する上で真にふさわしい保育を行なう責務があり」
「障害者だからといって一律に保育を認めないことは許されない」
として、入園を認めるよう命じた裁判の裁判長がその人だったという内容で、これを【先輩】と題してメルマガのエッセーに載せたところ、読者の方から嬉しいお便りがあった。
このような重要な仕事についている方たちと接点がないために
社会に対して不安を感じるのは私だけではないはずです。
こうして横顔を垣間見ることが出来るのは有り難いことです。
本当に立派な人たちは限られた空間の中だけで仕事をしているのでしょうけれど
もし社会の中でその雰囲気を撒き散らしていてくれたなら
社会はもっと安全で安心して暮らせるように思います。
励みになりましたので
お便りさせていただきました(引用終わり)
実際、先輩はこの判決のイメージ通りの人格者だった。専門的な法律論としてはまったく逆の判決もあり得たのかもしれないが、先輩の人柄からは、それは想像できない。

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北国 4

結局のところ、外側に出てくるのは、常に内側の何かなのだと、いつも思う。
お寺の立派な建物からして、それは先代の尼僧様や今の尼僧様の、衆生に対するお心が顕れ出たものだ。それを助けたいと思う信徒の皆さんの気持ち、そして人びとのダルマを完成させていこうとする御仏らの意志が、外に表現されたものだ。
外に顕れたもので、内側になかったものは一つもない。それはモノであれ、出来事であれ、同じだ。
御仏の世界とは一見異なるが、瞑想講座の三日目、横浜アリーナではK-1・HERO’Sの初代ライトヘビー級王者を決める戦いが行なわれていた。準々決勝を勝った大山峻護君は、この日、準決勝であの野獣のようなメルヴィン・マヌーフと戦う。
この戦いで、彼が力を出し切ることができるよう、先日の【マリアの会】では寄せ書きが贈られ、私は北の国から祈った。
今回、惜しくも敗れたものの、しかし戦い自体に顕れたのは、彼の長年にわたる修練や勇気だ。もともと、そのような戦いの場に立てること自体がそうなのだ。
人生は、勝つほうがいい。しかし、ときには負けることがある。いずれにしても、内側のものが外側に表現されつつ、われわれは少しずつ浄化され、進化していく。

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北国 3

初日からばたばたしてしまったので、仏様をゆっくり拝ませていただいたのは三日目になってからだった。
ご本堂の阿弥陀如来。見ているだけで幸せになるたたずまいだ。その左には、仏陀を取り巻くみ仏たちの絵がかけられていたが、素人の方がお描きになったものだという。
天界というのは(仏教では極楽というのだろうか……)こんなふうか……。そのような天界は実在する。が、実際に在るとすれば、それは外のどこかの世界ではなく、われわれの内側にしかないだろう……。そんなことを思ってしまう。
み仏の右側には、横になって入滅する仏陀の画。木材に、彫るようにして描かれた画だ。あまりに柔和な、穏やかな表情をしておられる。
われわれはいつも現世で戦っているが、しかし、われわれの内側にはこの表情のような穏やかな世界がある。
瞑想中に感じる静寂や充足感をそのまま生きることができれば、われわれもこのような生を生きることとなるに違いない。急にそうなれなくても、瞑想する度、われわれはそのための練習をし、その状態に近づいていく。

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北国 2

東京では台風による大雨が上がり、美しい秋晴れのなかを出てきたはずだったのに、飛行機で雨雲に追いついてしまった私はこの日、雨のなかを札幌に降り立った。
2、3時間、窓を開けておいたので、タバコの匂いは減っていたものの、部屋のなかは凍えるようで、吐く息が白く凍る。
急いで暖房を入れ、風呂に湯を張り、暖かくなってきたところで思わぬことに睡魔が襲ってきた。このまま暖房を入れて眠れば、朝には喉がガラガラになっているかもしれない……。そう思い、切って寝たのが間違いで、翌朝にはふたたび、部屋は北国の真っ只中だった。
ホテルは快適でも、お寺は寒いに違いない──。そう思って行ったのに、暖かかったのはお寺のほうだった。物理的に暖かかったのもさることながら、皆さんの心配りはそれを上回る温かさだ。
風邪をひきながらも三日間、講座を進めることができたのは、全くそのおかげだ。参加者の皆さんもまた、それぞれ熱心にお話を聞いてくださるので、話すほうもつい熱が入る。

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北国 1

札幌で瞑想講座【1st STAGE】を行なった。
どうか風邪をひかないようにしてください──。何人かの人にそんなことを言われて送り出された。
特に今回はお寺を使わせていただくので、イメージ的にも寒い隙間風が入り込んでいてもおかしくない。ジャンパーを着込み、ひざ掛けを用意して東京を発った。
が、行ってみると事情が違っていた。お寺は、広い敷地内に堂々たる建物。先代の尼僧様が、自らは質素な生活をしながら山を開墾し、心打たれた信徒の皆さんが協力してこれだけのものが出来上がったという。
そのうえ、私は分不相応な心配りを皆さんからいただき、中は暖かそのもの。これでは風邪のひきようがないと思い、初日を終えた。
ところが、その日ホテルにチェックインしてみると部屋がタバコ臭い。気持ちが悪くなりそうだったので、窓を開け、そのまま外出した。帰ってみると、そこはまさに北国だった。

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学会 3

また、身体的領域
 毎日の生活のなかで、治療(医療)がどれくらい必要ですか
 痛みや不快感のせいで、しなければならないことがどのくらい制限されていますか
社会的領域
 人間関係に満足していますか
 友人たちの支えに満足していますか
等々についても、顕著な改善をみた。体は心と一体なので、心が改善することで身体が改善することは当然かもしれないし、社会的領域についても同様だろう。しかし興味深いのは、
 必要なものが買えるだけのお金をもっていますか
 毎日の生活はどのくらい安全ですか
といった環境領域についても有意に改善がみられることだ。瞑想すると自分自身が進化し、その肯定的影響が周囲にも及ぶと常々申し上げているが、そのことが示唆されたかたちになる。
事務局より:
10月1日の<プレマ・セミナー><瞑想くらぶ>は、5階のフロアで行なわます。スリッパが足りなくなることが予想されますので、必要な方はお持ちいただければ幸いです。
また、【マリアの会】では、美味しいインド料理と、その道のプロをお迎えしてインドの聖歌をご披露いただきます。
どなたでも、気楽な服装でのご参加を歓迎しますが、もしインド式の、またはさまざまな民族衣装でおいでになると、さらに楽しい会になるかもしれません!

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学会 2

瞑想をする人の心身が変化し、生活の質が向上していくことは古くから経験的に知られていた。それについては戦後、西洋科学の視点からかなり精力的な研究が行なわれてきたが、瞑想実修者の心理変化に関して、長期的で計量心理学的な調査をしたものは少ない。
この研究は、瞑想開始から約一年を経過した後の気分や生活の質(QOL)、抑うつ度、不安度などの変化を調査したものだ。
そしてその結果は、予想を上回る、肯定的なものだった。
一例として、生活の質(QOL)についての質問のなかで、心理的領域に関するものは、たとえば、
 自分の生活をどのくらい意味のあるものと感じていますか
 自分の容姿(外見)を受け入れることができますか
等についてである。こうしたいくつかの質問に関する回答は、瞑想前と瞑想を始めて一年後とでは、有意に改善している。

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学会 1

日本アーユルヴェーダ学会は、その前身をアーユルヴェーダ研究会という。おおよそ30年程前、インドに渡り、インド伝承医学に接した丸山博・大阪大学教授や幡井勉・東邦大学教授(いずれも当時)が中心となって発足した。
9月23、24日、年に一度の研究総会が富山で開かれた。私も毎年、一題か二題、発表や講演を行ない、座長をするが、今年も一題を発表し、一セッションの座長を務めた。
発表の演題は、『瞑想による長期的な心理変化 ──<Art of Meditation>による肯定性の増大──』。瞑想を始める前と、一年間継続した後とで、心身の状態にどのような変化が起こるかを評価したものである。
瞑想講座をとられた皆さんのなかに、調査票への記入にご協力くださった方が多数おられるが、その結果がまとまってきたのである。

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大阪 2

以上のような思いがまったくの杞憂であることに気づくのに、それほどの時間はかからなかった。
今回、私が経験した大阪の方たちは、まことに繊細、まことに知的、もの静かだった。
知っていそうにない科学者の名前を多くの方が知っていたり、そのうち皆さんが深い体験をするものではあるにしても、初日から目覚ましい体験をされる方が何人もいたり……。その上、会場を貸してくださったヨーガ教室の先生とスタッフの方たちにはさまざまに気の利いた配慮をしていただき、当初の懸念とは裏腹に、気持ちよく三日間が過ぎていった。皆さんで一緒に行なった食事会は、談論風発、この上なく楽しい会となった。
一般に、「大阪の人は……」とか「日本人は……」などという先入観にいつも落とし穴があるとは分かっていても、実際にこうもイメージと違うと、ただただ不明を恥じるばかりである。ちなみに、皆さんからは、人生における幸せな三日間だったとの感想を多数いただき、私自身の思い出となった。

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