追想5

『理性のゆらぎ』に少し書いたが、
後援会の集まりに行っても、昔からウーロン茶しか出なかったようだし、
およそ地元に、利益誘導らしい利益誘導をしたという話を聞かない政治家だった。
私自身は、この人と面と向って話したことがそう多いわけではないが、
かつてご母堂様が亡くなられたとき、お悔やみを申し上げると……

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追想4

宮澤喜一が政治家に向いていたか、いなかったかといえば、
およそ向いていなかった、と言うしかない。
特に権力闘争にはからっきし興味がなく、
実際、いつも闘いには負けていた。
英字新聞を読み、
欧米のエスタブリッシュメントらと気楽に英語で話すその姿は……

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追想3

早い段階であれば数兆円で済んだであろう手当ては、
時期を逸し、もはや有効な方法は残されていなかった。
宮澤は財政出動により、
アジア経済危機を乗り越え、
日本発の世界恐慌を防いだ。
だが、その代償として、膨大な国債発行残高が残されることとなった。
やむを得ない。
民主主義とは……

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追想2

自由民主党・第十五代総裁であった宮澤は、
その後、政治改革で目立った成果を上げることができず、
内閣不信任案を可決され、解散・総選挙に打ってでた。
が、結果は惨敗。
過半数を割り、下野することになる。
宮澤が、徳川十五代将軍になぞらえられる所以である。
だが、続いてできた連立与党は、
当初国民に期待されたような立派なものにはなり得ず、
「自民党より酷い」とまで一部では言われながら、
結局政権はふたたび自民党に戻ることとなった。
98年、小渕政権で、宮澤はふたたび蔵相に就任する。
するとマスコミは一転……

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追想1

1992年、バブル崩壊後の日本経済は、
まるで奈落の底に落ちていくかのような勢いで崩落を続けていた。
ときの総理大臣・宮澤喜一は、この年、講演で、
これから不良債権に本格的に苦しむことになるであろう銀行に対する
公的資金の投入に言及した。
「国民経済全体のためならば……」
私などのような素人でも、そのほうがよいに違いないと思ったが、
マスコミの反応は逆だった。
「普通の会社が倒産の危機にあっても、政府は何もしない。
それなのに、銀行であれば血税を投入するのか。
バブルを創り出し、
多くの人びとに無理やりカネを貸し出し、
日本全体を塗炭の苦しみに追い込んだ張本人に……」
マスコミの論調も、もっともといえばもっともだったかもしれない。
だが、背に腹を代えられるのか。
このときに公的資金を入れていれば、
不良債権処理に必要な額は……

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新書5

こうして、明日の早朝からは、
日本アーユルヴェーダ学会の仕事で富山に行く。
気がついてみれば、書き始めたはずの本のほうは、進んでいない。
ため息をつきながら、17日にセミナーで解説する聖書の一節を読んでみると、
そこにはふたたび、師イエスと弟子についての記述がある。
というよりも、前回、私はこの部分を終えることができなかったのだ。
ところで、師と弟子の関係というと……

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新書4

そうして、ほぼ三分の一を書き終えたところで私は広島に行き、
帰ってきて間もなく、青森に行った。
昨年4月の『大いなる生命と心のたび』でたどった奥入瀬渓流を、
青森駅から逆に、十和田湖までバスで移動した。
昨年は一面、真っ白な雪に覆われていたその場所は、
新緑の、まぶしい季節を迎えていた。
しかし驚いたことに、このような時期に……

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新書3

問題の5月15日の週はむなしく終わり、
土曜日、日曜日も過ぎた。
久しぶりに、講座もセミナーもない週末だった。
といって、私が特に働き者なのではない。
皆さんが平日、会社に通っておられる間、
私は自宅にいてよいのである。
翌、21日の月曜日も朝6時前に目覚め、
普通に始まった……かのように見えた。
が、この日の午前、私は急に眠気を感じ、
しばらく横になったのである。
その間に何があったのかは分からない。
とにかく二時間後、起きてきたとき……

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新書2

次の本を書き始めることになるだろうといわれていた5月15日は、
呆気ないほど普通に通りすぎていった。
当然といえば当然だ。
バタバタしていて、何も起きようがない。
そうして、5月16日も、17日も、
同じように通り過ぎてしまった。
そもそも、普通の文章を書き始めるにも……

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新書1

『この年の5月15日を過ぎた頃、
 次の本を書くことになるだろう……』
聖者によるこの予言を、私は以前から知っていて、
困惑していた。
いったい何についての本を書くことになるのか、
自分でも分からなかったのである。
いくつかの可能性が考えられたが、一番書きたかったのは……

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