因果10

日本人として初めてポスティングシステムに道をつけたイチローは、
最初の年に首位打者、盗塁王、新人王、MVPに輝いたばかりでなく、
大リーグのシーズン最多安打記録を打ち立て、
今年はオールスター史上初のランニングホームランを記録してMVPに輝いた。
これが、自らも初めてのランニングホーマーだったことを思うと、
どこまでも記録に残る星の下に生まれた人である。
しかし、このイチローですら、相対界にいる以上、
幸運だけがやってくるわけでは、もちろんない。

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因果9

桑田はまた、こんなことも言っている。
「20歳のとき、25歳のとき、30歳のとき、
 いつ大リーグにデビューするのも人それぞれの人生。
 自分の場合は、39歳でデビューするのがよかったんです」
そう言う桑田の脳裏には、
今年一億ドルの移籍を果たした松坂の姿があったに違いない。
松坂によって西武球団にもたらされた60億円という数字は、
西武球団自体を3年間維持できるほどの金額だという。
イチローのときで15億円だったことを考えても、
この金額は破格だ。
今年前半、
打たれても打たれても味方打線が点を取り返してくれる松坂を見ていると、
因果関係など分ろうはずもないのに、
やはりよい因果が回ってきているのかと、つい思ってしまう。
こうして、日本中を沸かせた甲子園の新しいエースは、
かたや弱冠26歳で名門ボストン・レッドソックスのエースとなった。
一方……

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因果8

高校時代、最後の夏の甲子園で頭に死球を当てられた水野は、
プロ入り後、最後まで才能を開花させることなく引退していったが、
当てたほうの桑田は巨人のエースへと登り詰めていった。
が、江川同様、彼には終始、悪役のイメージがつきまとった。
さらに、バブル期には不動産投機に巻き込まれ、
すべての財産を失ってしまう。
ドラフトで悪役になった二人の天才投手は、奇しくも、
バブル期の投機により同じように“破産”することとなった。
ちなみに、江川が今日、日本テレビ系列にしか登場しないのは、
読売グループが、いわば破産管財人になったからだ。
同じ理由で、桑田も大リーガーになる夢はおろか、
FA権の行使すら諦めざるを得なかったが、
ここ数年は巨人においても登板の機会は与えられず、
日本の球界を事実上引退した。
……が、そのことが逆に……

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因果7 

高校3年間で清原とともに甲子園を沸かせた桑田は、
結局、可能な5回すべてで甲子園に出場し、
うち4回、決勝に進出、2回優勝するという離れ業を演じている。
あまり知られていないが、彼は打者としても非凡で、
甲子園における通算本塁打数第一位は清原、第二位は桑田(6本)である。
1985年のドラフト会議は、
当然、清原・桑田の行き先に国民の関心が集まっていた。
清原が巨人入りを熱望していることは知られていたが、
それに対し桑田は……

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因果6

桑田真澄が登場したのは、
池田高校の超強力打線が甲子園を沸き立たせていた、まさにその時代だった。
池田は、それまでの、バント・スクイズ等の小ワザを手用しながら、
小数点差を守り抜くという高校野球の常識を覆す豪快な攻撃野球で、
甲子園を席巻していた。
しかも、県外からの野球留学生をとらず、
“甲子園”を至上命題としない校風が、好感を呼んでいた。
その池田のエースで4番・水野雄仁は、すでに甲子園のヒーローだったが、
桑田はそれに劣らぬ才能の持ち主だった。
が、それは江川のような超弩級のものではなく、
彼はどちらかといえば努力型の人だったと私は思う。
その上、同じチームには清原という怪物がいて、
最初投手だった清原のあまりの才能に圧倒された桑田は、
一年生時、自分は外野に回ろうと思ったというくらいである。
しかし、監督が選択したのは、清原を一塁にして打者に専念させ、
桑田を投手として残すというものだった。
1983年、池田高校の水野が3年、PL学園の清原・桑田が1年の夏、
両者は甲子園で激突した。
私の記憶では、試合前、不敵にも桑田がこう言い放ったことが印象深い。
「池田の弱点を見つけた」
そうして実際、試合当日、何が起きたかといえば、不幸にも……

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因果5

この事件は、第一義的には、
頭のいい大人たちが一生懸命考えて作った野球協約に不備があったことが原因で、
それ自体はプロ野球機構側の責任と思われる。
江川は、この不備をいわば“ついて”しまったわけで、
そのこと自体、得策だったとはまったく思えないが、
一方で、江川に対する世間の非難は想像を絶するものだった。
野球協約は日本プロ野球機構内のきまりごとである。
そこに不備があって、誰も予想しなかったような方法であったが、
江川は巨人と契約することがルール上は可能だった。
この場合、もし誰かをどうしても責めたいのであれば、
まずは不備のあった野球協約や、
それを作ったプロ野球機構が責められるべきだと私には思えるのだが、
世間はもっぱら江川個人を責め立てた。
このような社会的リンチが許されるのであれば、
この国が法治国家であることはどこで担保されるのだろうかと思われたほどである。
実際、そのときどきの民衆の感情で明文化されたルールを反故にしてよいのなら、
今度は権力者が自分の都合や感情で法を曲げたとき、
人びとにはこれを批判する権利が残っているのだろうかというのが、
当時の私の感想だった。
そのへんは、公権力を持つ政治家が架空の事務所費を計上したり、
賄賂を受け取ったりしたときと、扱いは自ずと異なってしかるべきであろう。
しかし、ルール上可能だったとはいえ……

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因果4

「密約」で思い出される大投手といえば、
やはり江川と桑田であろう。
若い皆さんはあまりご存じないかもしれないが、
江川の才能はまさに「天才」としかいいようのないものだった。
が、どうしても巨人に入りたいと思った彼は、
そのためにプロとしての出だしをしくじってしまう。
前の年のドラフト会議で一位指名された江川については、
指名をしたクラウンライターが単独で交渉権を保有していた。
その年のドラフト会議の「前々日」までは。
そして、ドラフト会議「前日」は、
野球協約上、どこの球団にも単独の交渉権はなかった。
つまり法的には、どこの球団にも交渉権があったことになる。
この、いわゆる“空白の一日”、江川は巨人と契約を交わした。
会議前日の夕方……

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因果3

イチローと比べてはいけないかもしれないが、
松井の場合は、少し様子が違う。
野球協約においては、
FA宣言をする選手が他球団と事前交渉をしてはならないとされている。
しかし松井の場合、NYヤンキースと事前の交渉ができていたとみるのが自然である。
こうして、移籍会見の席上、松井自身の口から、
「裏切り者と言われるかもしれませんが(大リーグに行きます)」
という発言が、つい出てしまった。
事前の交渉、つまり密約がなければ、
裏切り者などと呼ばれる筋合いは全くないのであって、
その言葉はまさに、純情な青年の口からつい出てしまったのである。
それでも……

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因果2

五感のレベルで認識できる通常の因果律は、
科学においてはっきりと規定されるものなので、
その意味ではあまり面白みのあるものではない。
ただ、たとえば二酸化炭素排出量と温暖化の因果関係のように、
まだまだ研究途上で分からないことはいくらでもあって、
そうした意味でのみ、あやふやさを伴う。
一方、五感で直接認識できない因果律のほうは、
『法則』とは呼ばれるものの、これを認めない人びとも数多く、
いつも議論は複雑になる。
五感では計り知れない法則なのだから分からないのは当然だが、
しかし、いろいろと想像を巡らす余地があるのは、よくも悪しくも事実である。
たとえば……

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因果1

ものごとの因果関係には、五感のレベルではっきり認識できるものと、
そうでないものとがある。
前者は、原因と結果の無限の連鎖のなかの、
比較的粗雑な領域において見られ、
西洋自然科学が得意とする分野である。
一方、後者は、比較的精妙な領域においてみられ、
物的証拠は挙げにくいものの、
われわれが人生を生きる上で不可欠のものである。
前者は、狭い意味での因果律と呼ばれ、
われわれはこれを通常の意味で科学的に証明することが可能である。
一方、後者は普通、『カルマの法則』などと呼ばれ、
一般には証明することができない。
それでも……

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