旅日記9

12/ 2(4日目)その4
ロカマドールにはもう一つ、
かけがえのないものがある。
黒い聖母子。
洗礼を受けないで亡くなった幼児を少しの間だけ生き返らせ、
洗礼を受けさせて天国に導かれたとか、
海難の際の祈りを聞いてこれを助けると同時に、
教会の鐘を高らかに鳴らされたとか、
無数の奇跡の伝えられる聖母子像だ。
こうしてローマ法王は、
「聖母に祝福されたこの地に巡礼した者については、罪を減ずる」と宣言。
以来、ローマ法王から平信徒、国王から乞食にいたるまで、
無数の人びとがこの地に巡礼した。
ひざまづいて216段の階段を登り、
多くの奇跡が起き、
そうして今も、巡礼者たちはここに悩み、憂いを置いていく。
旅をふり返って……

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旅日記8

12/ 2(4日目)その3
イエスが磔になるため、十字架を担ってゴルゴダの丘を登った時、
途中で倒れたイエスの代わりに十字架を背負わされた人は、
「キレネ人のシモン」という名で聖書に登場する。
しかしこのとき、
血と汗で汚れたイエスの御顔を布でぬぐった女性の名は、
聖書には登場しない。
が、それは史実であるとされ、
イエスはその布に自らの顔を写して与えた。
この女性(聖ヴェロニカ)の夫のほうは、
よい徴税人ザアカイとして聖書に登場するが、
彼は後に名をアマドールと改め、聖母マリアに仕えた。
そうして聖母の死後、
はるばるこの地にやってきて亡くなったと伝えられる。
時代は千年以上下って1166年、村人の枕元にイエスが現れた。
「アマドールの亡骸を埋葬しなさい」
言われた地面を村人たちが掘ると、
聖アマドールの遺体は腐敗しておらず、
亡くなったばかりのような状態で出てきたという。
こうしてこの地は、
ロカマドール(アマドールの岩)と呼ばれるようになった。
           
旅をふり返って……

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旅日記7

12/ 2(4日目)その2
(ドライバーが40分と言っているということは、
 実際には1時間はかかるだろう……)
という私のヨミは見事にはずれ、
結局、バスは復旧しなかった。
買い物に興じている間に迎えのバスが来て、荷物をすべて入れ換える。
だが、この新しいバス、どうも狭いような気がするのは私だけか……。
このバスでこれから一週間、旅をするのか……。
なんとも割り切れない気持ちを抱きつつ、
とにもかくにも聖女ベルナデッタについての説明を続けていたところ、
対向車線からもう一台、別のバスが現れた。
なんと、今のバスはつなぎで、
もう一度、別のバスに乗り換えるというのだ。
そういえば、旅の初日、
スーツケースが二つも破損し、
私の布製のも切れていて、
さらに一つの荷物が出て来なかったばかりか、
ホテルに着いたら、一人の方は、
スーツケースが開かないと言われたのだった。
鍵をどこかで失くされたようだったが、
結局、トゥールーズのホテルでは開かなかった。
……というような事件満載で、
巡礼の旅は続いていく。
旅をふり返って……

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旅日記6

朝の8時、泣く泣くルルドを出発する。
仕方がない。ルルドは、何日滞在したとしても、
必ず、あと一日あれば……と思うのだから。
ルルドの街を出で、バスは一路、ロカマドールへ。
ところが運転手さん、
突然バスを道路脇の空き地に止め、何やらわめき出した。
車の調子が悪いらしい。
しかも、本格的に工具を取り出してきた。
恐る恐る、復旧にどれくらいかかるのかと聞くと、
40分だという。
40分! 
……ということは、実際には1時間以上かかるだろう。
絶望の際で、見れば道路の向いに、ちょうどスーパーがあった。
しかも、日曜の早朝だというのに開いている。
皆さん、巡礼の旅の間、買い物をする時間はあまりないかもしれません。
今、時間はたっぷりあります。
……ということで、思わぬ買い物タイムとなった。
旅をふり返って……

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旅日記5

12/ 1(3日目)
前日の閑散とした待合室にすっかり気をよくした私は、
この日、朝、一番風呂ならぬ一番水を目指して水浴場に向った。
首尾よく、ベンチには誰もいない。
時間まで待って中に入ってみると、
なんとすでに、どこかの子供たちが歓声をあげながら水に入っていた。
聖域の職員か、ボランティアの方のお子さまか……。
いずれにしても、こういう機会はもうないかもしれないと思いながら、
私も冷たい冬の水に入る。
バスタブに立ったままお祈りをすると、
足がだんだん痺れてくる。
それほど冷たい水ではあるが、
実は水温自体は年間を通じて一定(約13℃)。
出てくると、足が赤くなっていた。
この日の午後は、前日に引き続き、
希望者の皆さんとご一緒にルルドの村を巡礼。
ホテル、土産物屋ともに、多くが閉まっているが、
しっとりと趣があっていい。
しかしそれにしても、人びとはなぜ、
この静かで美しい季節にルルドに来ないのか……。
もちろん人びとが来ないから、静かなのではあるが……。
旅をふり返って……

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旅日記4

11/30(2日目)その1
この日、もともと朝9時出発という予定を、
私たちは直前の打ち合わせで30分早めることにした。
前日が遅かったにもかかわらず、
皆さん、きっちり時間どおり集合してくださった。
バスの中では、ルルドの出来事を詳細にご説明する。
そうして車窓からルルドの町並みが見えてきて、
その上、土産物屋さんに並んだ多くの聖母像が目に入ってきたときには、
いつもながら気持ちの高揚を抑えられなかった。
ホテルは、いつものギャリエ・ド・ロンドレよりもさらに聖域に近く、
なおかつ新しいホテル・サン・ソヴール。
お昼御飯をめいめいでいただいた後、聖域へ。
大聖堂前面が工事中であったが、
全員がルルドで集まるのはこの機会しかないので、
集合写真を撮る。
しかし私の心は急(せ)いていた。
なんとか今日のうちに一度は皆さんに水浴を体験していただきたい、
そのために、朝、ホテルを早くでてきたのである。
そう思って、聖なる洞窟の説明もそこそこに水浴場前に行ってみると、
ほとんど待っている人がいなかった。
(楽勝だ……)
心に笑みが広がった。
旅をふり返って……

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旅日記3

11/29(初日)その3
飛行機が遅れた上にクレームに手間取り、時計を見るともう11時過ぎ。
日本を発ってから、なんと20時間が経っている。
トゥールーズでは、千年の歴史を誇るサン・セルナン・バジリカや、
ドミニコ会最古で、大聖者トマス・アクィナスの遺体の眠るジャコバン修道院、
ライトアップされた美しい市庁舎を見る予定であったが、
このうち後者二つは道路の関係でバスが入れないことが分かり、
われわれはサン・セルナン大寺院に。
皆さま、すっかりお疲れかと心配していたが、
ライトに浮かび上がる幻想的な寺院の姿におもわず感嘆の声があがる。
ちょうど、夜12時の鐘が鳴り、
疲れも飛んでしまう。
旅をふり返って……

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旅日記2

11/29(初日)その2
「エール・フランスで行く空の旅。
 パリがあなたを待っていますっ!」
『アタック・チャ〜〜ンスッ!』
の児玉清さんが、日曜の午後、もう30年も続けているセリフだ。
とはいえ、エール・フランスの客室乗務員さんは、
決して愛想がよいとはいえない。
なんとかご機嫌をとりながら、
カップヌードルにお湯を入れてもらい、サンドイッチをもらう。
窓側に座っておられる方は通路に出にくいので、
こうして機内で間食をお配りするのが、旅の楽しみの一つだ。
パリを経て、われわれはトゥールーズへ。
パリ発が遅れた分、トゥールーズ着も遅れ、
その上、荷物が破損しているという方が二人おられた。
うち一つは、もう使えそうにない。
オフィスにクレームに行こうとしたところ、
なんと、出て来ない荷物も一つある。
結局、それも出てこず、3人分のクレームに行くこととなった。
ところが、オフィスで待っている間に気がついた。
布製の私のスーツケースの、表面がスッパリ切れている……。
いったいどうなってるんだ、この旅は……。
旅をふり返って……

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旅日記1

11/29(初日)その1
ついに訪れたこの日、
例によって2時間睡眠で空港に着いた。
すると、待ち構えていた日本旅行のイソノさんが、
顔がひきつらせて駆け寄ってくる。
「センセー……」
と大阪弁でいつもの口調。
「それが……実は飛行機の席がまたとれてなくて……」
と、言われたらどうしようという思いが、
行きの車中でふと心をよぎる。
が、しかし、今回はそんなこともなく、
VIPルームで皆さまにご挨拶。
『大いなる生命と心のたび』は初めての添乗員さんもてきぱきと説明をして、
最後にイソノ氏が登場した。
旅行が延期になったことで多くの方にご迷惑をかけてしまったお詫びを手短かに述べ、
そして一言。
「皆さま、大変お疲れさまでした」
……(・・?)
「行ってらっしゃいませ」の間違いだったことに気づき、
すぐに言いなおす。
おかげで、少し雰囲気がほぐれてよかったと、
私はほっと胸をなで下ろした。
旅をふり返って……

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聖水

ルルドと南フランスの聖地、パリの旅から帰国して早や3日。
翌日には講演があり、その他もろもろ、
溜まりにたまった仕事をこなしてはいるというのに、
いまだ感覚は完全には戻らない。
今回、時差にはあまり苦しんでいないので、
これはやはり、聖地の力か……。
ポツリポツリと届き始めた旅行参加者の皆さんのメールなどを拝読していると、
他の皆さんもある程度同じような感覚でおられるらしい。
早く旅日記を書いて、とのメールも来るので、
ブログを過去にさかのぼって一日ずつ掲載したいと思っているが、
その間に、参加者の皆さんからは是非、
傑作写真集や旅の感想を寄せていただけたらとても嬉しい。
私のほうからもプレゼントがあって……

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