旅日記33

7月11日-3
「日本から来られたのですね?」
シャンカラーチャーリヤはそのようにして話し始められた。
「日本では、仏教が信じられているのですか?」
「はい、おおむね」
「仏教で一番大事なことは?」
「慈悲……でしょうか」
「皆さんも全員、仏教徒ですか?」
「仏教徒もいれば、キリスト教徒、ヒンドゥ教徒もいます」
「そうですか、そうですか……」
シャンカラーチャーリヤの微笑みは、
それこそ慈悲深い父親のようだった。
お目にかかれるかどうかわからなかったとはいえ、私は予め、
バスのなかでシャンカラーチャーリヤについてある程度の解説をしていた。
しかし、今回の旅と直接関係があるとは知らされていなかったので、
皆さんはそれを聞き逃されたかもしれない。
それでも、このときのシャンカラーチャーリヤの慈愛の波動を受け、
何人かの方は涙を流された。
私はといえば緊張しきっていて、
「何か質問がありますか?」
とシャンカラーチャーリヤに問われて……

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旅日記32

7月11日-2
大聖シャンカラが、いつの時代の人物だったのか、
はっきりしたことはわかっていない。
学術的には八世紀の方であったとされるが、
確証はない。
確かなことは、大聖シャンカラこそは、まさに失われつつあった究極の
不二一元論を再興した大聖者であったということだ。
今日、ラーマクリシュナ・パラマハンサがあるのも、
スワミ・ヴィヴェーカーナンダがあるのも、
われわれが不二一元の大哲学を学ぶことができるのも、
すべてはこの大聖者のおかげであると言ってよい。
その後継者が、シャンカラーチャーリヤである。
もし、このシャンカラーチャーリヤについて皆さんが知っていて、
かつ、聖下に直接お目にかかることができると事前にアナウンスしたならば、
今回の旅の参加者は倍になったかもしれない。
だが、お目にかかれるかどうかは、この日になってもまだ分からなかった。
われわれは、どうなることか分からないままの状態で、
二十分、三十分と待つこととなった。
そうしてついに……

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旅日記31

7月11日-1
翌朝、さらにアシュラムの責任者のご案内で、
実際に地中から盛り上がった女神像を拝礼させていただく。
最初に盛り上がったとき、徐々にその背丈が高くなっていったさまが、
写真に残されていた。
その後、聖者は別のものが地中から物質化されることを予言、
帰依者らが見守るなか、その通りにリンガムが土中から出現した。
これらの聖像を、今も聖者ご自身が拝礼することで、
アシュラムの一日が始まるという。
また、聖者が一千万回のマントラを捧げたというドゥルガ女神のご像の前で、
われわれも祈らせていただいた。
前夜の黄金寺院も驚愕したが、しかしそれは人間が造ったもの。
それ以上に、これらの聖像に感動する。
この日午後、向かったカンチープラムは、
インド七大聖地の一つ。
なかでも、「愛の目を持つ女神」カーマークシ寺院は有名だ。
この寺院で儀式に与り、女神カーマークシの御神像を拝礼した後、
われわれはある小さな社務所へ向かった……
カーマクシ寺院

愛の瞳の
カーマークシ寺院

2008_07_11_7カーマクシ寺院象

象の鼻の祝福

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旅日記30

7月10日-3
今から15年ほど前、
ヴェロールの地に生まれ育った一人の若者が、神々しい女神を見た。
それと相前後して、若者の住んでいた場所近くの土地が盛り上がり、
なかからは人の背丈ほどの女神像が出現した。
女神サラスワティの英知、女神ラクシュミの富、女神ドゥルガの力を併せ持つ、
女神ナーラーヤニ。
自らがその化身であることに気づいた少年は、その後、
周囲の人びとに対してさまざまな奇跡現象を表す。
病気の治癒や物質化現象、予言……。そうして15年経った今、
この場所には黄金の寺院が建立された。
夜、ライトアップされた黄金寺院に、
一般の人びとの列の脇から入らせていただいたが、
まさに圧巻! の一言。
そしてさらに、
シュリ・シャクティ・アンマ=ナーラーヤニの化身との謁見、講話……。
のちに、関係者からさまざまな話を聞いた。
この方は、長くお仕えしているが、
あのように、何十人もの集団で聖者がダルシャンを与えるのを、
見たことがないとのこと。
さらにその後、全員に講話までしていただいた。
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黄金寺院
この日は、アシュラムに泊めていただいた。
インドのアシュラムは……

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旅日記29

7月10日-2
マハーバリプラムのもう一つの見物は、『クリシュナのバターボール』。
丘の斜面に、きわめて不安定なかたちで丸い巨岩がとどまっている。
地震でもあろうものなら、または雨や、風が吹いてすら、
簡単に転がり落ちそうな岩だ。
しかしそれは悠久の昔から、この位置でじっとしているのだという。
昔、この地方を治める王様が悪戯心を起こし、
この岩にロープを張って象で引いた。
……が、それでもびくともしなかったという伝説がある。
幼子の頃、悪戯好きで、
台所からバター・ボールを盗んで食べたクリシュナ神にちなんで、
この巨岩を『クリシュナのバターボール』と呼ぶ。
だが、相対界において、永遠に続くものは一つもない。
いつかこの巨岩が、この場所から転がり落ちるときが来るだろう。
それは、たまたまわれわれがそのすぐ下にいるときかもしれない。
そんな冗談を言いながら……
IMG_1707

クリシュナのバターボール
P1020213

クリシュナ神のごとく
コピー (2) 〜 P1020215

やあ……。

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旅日記28

7月10日
マハーバリプラムの遺跡のなかでも最高の傑作は、
縦横それぞれ13メートル・29メートルの岩の壁面に描かれた大レリーフである。
そこに描かれているのは『アルジュナの苦行』。
『マハーバーラタ』の大戦争を前して、
兵力として圧倒的に劣勢な側のアルジュナは神々から武器を賜るため、
ヒマラヤに苦行に出る。
こうして得た神弓ガーンディーヴァは、
マントラによって射る弓であり、
同時に、尽きることのない箙(矢筒)も与えられる。
さらにアルジュナは、
自然界の火のエネルギーを集約して敵を一瞬にして殲滅するという、
最終兵器を得る。
これらの神器により、アルジュナは戦いに勝利することができたわけだが、
その国の伝統や古典に、特に若い人たちがほとんど関心を払わない現代、
インドもその例外ではなく、
ほとんどの人はここに来てもレリーフの意味をほとんど理解しないで帰るのだと、
ガイドは嘆いた。
毎月【バガヴァッド・ギーター】の解説を聞きに来ている皆さんからすると、
身近な登場人物らが並んでいるのだが……。
ちなみに……
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世界遺産・アルジュナの苦行
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両手をあげて片足立ちしているのがアルジュナ
IMG_0185

左・座っているのがドローナ先生
中央の窪み・ガンジス河と蛇神
右・アルジュナの真似をしている猫
DSCN0274

世界遺産・パンチャラタ
(巨大な一枚岩から削りだした5つの寺院)

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旅日記27

7月9日-8
知事は、式のあと、庁舎をぜひ訪問してほしいと何度か言ったが、
スケジュール的に不可能だったので、
われわれはこの日の午後、聖地マハーバリプラムへ向かった。
マハーバリプラムは、太古よりの遺跡を今に伝える聖地である。
この場所のヒンドゥ寺院は、
歴史上初めて、石や岩を組み合わせて造られた。
それまでは、一個の岩を彫ったり、
または、一個の洞窟をくり抜いたりしていたが、
それでは多くの寺院は造れない。
ところが、マハーバリプラムに登場した寺院のように、
石や岩を組み合わせて造るとすれば、
それほど制約がない。
こうして、紀元7世紀以降、数多くの寺院がインドに出現し、
それに伴ってヒンドゥ教も栄えることとなった。
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聖地マハーバリプラム
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世界遺産・石積みの海岸寺院
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御本尊のシヴァ・リンガ
2人

パンジャビ姿がきまっています!
その遺跡群が見事なため……

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旅日記26

7月9日-7
11組の結婚式には、郡の知事さんが列席してくださった。
若く精悍な感じの人で、式が始まる前、しばらく雑談などしていたら、
突然、二人の女性が駆け寄ってきて、激しく泣きながら何かを訴え始めた。
どうやら、母親が、娘のことでお願いをしているらしい。
母親の目からは、次から次へと涙が流れだし、
娘はその脇でただうつむいたままだった。
周囲は、これを止めるべく、割って入ろうとしていたが、
知事はそれを制し、差し出された書類にサインをした。
あとで知事に聞くと、娘さんはガンで、治療を受けたいのだが、
どの機関も相手にしてくれない。
知事さん、どうか何とかして! という内容だったという。
P1020152

ガンになった娘の救済を訴える母
壇上では、11組のカップルが結婚の儀式を待っていた。
彼らも、今回のことがなければ結婚できなかった人たちだ。
しかし世の中には、他にも不幸がほとんど無限にある。
われわれが少しくらい何かしたからといって、
その膨大な量の不幸にはほとんど変わりがないだろう。
その一部は、われわれ自身によって経験されるかもしれない。
が、それでもとにかく……

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旅日記25

なにかチャリティをする、人助けをするというのは、
本当に難しい面がある。
依頼の手紙の人のように、教育にお金がかかる場合、
通常は家族が借金をして払うのだろう。
ずっと以前、そのような借金を熱心に依頼され、
かなりのお金を工面したことがあった。
父親である依頼主はサイ大学の教授であったが、
興味深いことに、そうしてお貸ししたお金はいまだに返ってこない。
それでは本人に大きな罪が残るだろうし、
話せばそのことは自覚しておられるようなのだが……。
とはいえ、引っ越しをしたらそれを正直に報告してきたり、
少しのお金ができたら送ってきたりしたこともあり、
その辺はさすがに……

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旅日記24

7月9日-6
今回、クマーラクディでガネーシャ寺院と、
9つの惑星の祠ができたのだが、
数年前、こんなことがあった。
このガネーシャ寺院の近くで、僧侶が恒常的にとどまり、
マントラや儀式を捧げる場所がないということだったので、
そのような小さな場所を一棟、お造りしたのであった。
2003年頃の、春から夏にかけてのことだったと記憶している。
同じ年の秋、「女神サラスワティの予言」が出てきた。
そのなかに、女神の言葉として、
私が僧侶に唱えてもらうべきマントラが記されていた。
『それはわたしのマントラ、サラスワティ・ヴァシア・マントラです。
 5マンダラ(240日)の間、毎日1008回。
 その間、毎日、9人の貧しい人に甘いものを差し上げなさい。
 また、9つの金属製の容器に9つのココナッツ、
 花・果物・甘味、樟脳、線香、ビートルなどをお供えし、
 毎日プージャを行ないなさい。
 このマントラは、儀式のための専用の館で毎日唱えられなければなりませんが、
 それが、あなたが建てた場所で最初に唱えられるマントラとなります……』
ちょうど、儀式のための小館ができた直後に……

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