気づいてみると、知らぬ間に眠りに落ちていたらしく、
寝返りをうとうとする自分のうめき声で目が覚めた。
もう一度眠ろうとしても寝つけず、
カーテンの外が明るくなってくるのを待つ。
そうして待ちわびた朝が来たと思って時計を見ると、
実際にはまだ5時であることに愕然とした。
朝、一番で近くの整形外科に行く。
狭い待合室には、通常の椅子が7、8客と、
おそらくは補助の丸椅子が十いくつも並べられていたが、
それが次々お年寄りの患者さんで埋まり、なお、立っている方がいるのを見たときには、
これからこの国が向っていくであろう未来像を垣間見たような気になった。
1時間ほども待って、とにかく胸と膝のレントゲンを何枚かずつ撮り、
ふたたびしばらく待っていると、写真が現像できたようだった。
(せめてヒビぐらいで済んでいれば……)
そう、願わなかったと言えば嘘になる。
しかしレントゲンを見た医師は、即、折れた箇所を見つけ、指さした。
飄々とした感じの医師で、
「ほーぅ、ほぅほぅほぅ、きれいに折れてますねぇ〜〜」
と言って感心してくれた。
肺と肝臓の両方に近い位置で、
肺に刺されば気胸に、
肝臓のほうに刺されば大出血はまぬがれなかったらしい。
「それにしても、これを一日、放っておいたんですか?」
「ええ……、あの、ちょっと忙しかったもので……」
そう言って私は、背中をすぼめた。
一般に骨折を治す薬も、有効な治療法もない。
できるだけ固定して、安静にしているしかない。
飄々としていたはずの医師は、看護師さんにコルセットをもってこさせると、
一転、毅然としてこれをきつく巻かせた。
「苦しくないですか?」
(苦しくないはずがないでしょう!)と、思わず言いたくなった。
少しゆるめてもらい、もう一度ゆるめてもらったが、それでもなおきつい。
「ひと月半くらいはかかりますので、いいですかぁ、安静にしててくださいね〜」
ふたたび、医師は飄々と言った。
「動かさない、温めない、咳やくしゃみもしないことですねぇ〜」
私は、必ずそうします、とばかりに口から出まかせを言った。
ここで、入院です、とか言われるのが一番困る。
一週間後、他の方のパリハーラムのため、今度は広島に行かなければならないのだ。
一方、膝のほうは思いの他深刻で、肉が少しえぐれていた。
が、仕方がない。
そもそも、あのスピードで車同士が激突、くしゃくしゃになったのだから、
はっきり言えばそのときに死んでもおかしくなかったのだ。
かつて、前の会社にいたとき、私には……
青山圭秀
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