７月９日－７
１１組の結婚式には、郡の知事さんが列席してくださった。
若く精悍な感じの人で、式が始まる前、しばらく雑談などしていたら、
突然、二人の女性が駆け寄ってきて、激しく泣きながら何かを訴え始めた。
どうやら、母親が、娘のことでお願いをしているらしい。
母親の目からは、次から次へと涙が流れだし、
娘はその脇でただうつむいたままだった。
周囲は、これを止めるべく、割って入ろうとしていたが、
知事はそれを制し、差し出された書類にサインをした。
あとで知事に聞くと、娘さんはガンで、治療を受けたいのだが、
どの機関も相手にしてくれない。
知事さん、どうか何とかして！ という内容だったという。
ガンになった娘の救済を訴える母
壇上では、１１組のカップルが結婚の儀式を待っていた。
彼らも、今回のことがなければ結婚できなかった人たちだ。
しかし世の中には、他にも不幸がほとんど無限にある。
われわれが少しくらい何かしたからといって、
その膨大な量の不幸にはほとんど変わりがないだろう。
その一部は、われわれ自身によって経験されるかもしれない。
が、それでもとにかく……
われわれは責務を果たしながら生きていくしかない。
きらびやかな式を前にして、
哀しみと希望が錯綜した。
