五輪 14


アテネ・オリンピック、男子ハンマー投げで銀メダルに輝いた室伏選手は、
その後、金メダルの選手のドーピングが発覚し、
繰り上げ金メダルに輝いた。
なんと今回、5位となった同選手は、
上位選手二人のドーピンク発覚により、
ふたたび銅メダルに繰り上がるという。
そういえばかつてブログに、こんな話を紹介した。
ソルトレークオリンピックの行なわれた2002年2月、アイススケート・ショートトラック男子1000メートルの準々決勝が行なわれた。世界の強豪がひしめくなか、南半球の選手がこの種目でメダルをとったことは一度もない。案の定、ブラッドバリーはこの日4位に終わり、準決勝に進めなかった……と思われた。が、上位選手のなかから失格者が出、繰り上がった彼は準決勝に臨んだ。
五輪選手とはいえ、並の選手かそれ以下に過ぎない彼を注目する者は、誰もいなかった。五輪を前にして、政府からの強化費は早々に打ち切られていた。練習に使う車の修理代8万円が出せなくて、父親から借金をした。この日のレースで、自分は競技人生を終える。そうしたら、故郷に戻って消防士になろう。借金も返そう。そう思って臨んだ準決勝だったが、ゴール直前で異変が起きた。前を行く二人が転倒し、彼は決勝に進むことになった。
翌日、決勝に進出した5人のなかで、ブラッドバリーは圧倒的に弱かった。問題にもならない。実際、競技場を数週し、最終コーナーにさしかかったとき、はるか前方で4人がメダル争いをしていた。あとは滑り終えるだけだった。……が、運命の女神はこの夜も弱者に微笑む。前を行く4人が交錯、4人とも転倒したのだ。競っていたら、それに巻き込まれただろう。ところが幸い、彼は圧倒的に弱かった。転倒した先陣の間隙を縫って、一着でゴール。栄えある南半球初の金メダリストとなった。
帰国したブラッドバリーを、故国のマスコミと観衆が待ち構えていた。世界一幸運な男。それは、連日マスコミを賑わすに充分な話題だった。テレビ出演、講演、CMの依頼が引きも切らない。ほどなくしてブラッドバリーは、故郷に2500坪の豪邸を建てたが……


……そのすべてを一括、キャッシュで支払った。


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