ラクシュミ 2


 買って帰った二体のうち、サラスワティは自宅に置き、クリシュナは「アージュの美」に置いた。自由ヶ丘でアーユルヴェーダのオイル・トリートメントを行なっているこのお店は、当時新装したばかりで、クリシュナ像はその雰囲気にピッタリはまった。お客さまの評判も上々のようで、このクリシュナは今もお店にある。
 ところで今回のインド旅行でも、僕はいつも行く神像ショップに行った。
 店に入るなり、僕の目を引いた白檀があった。あのラクシュミである。まさかと思ったが、やはり一年前に買わなかったものだった。だが、この店で同じものが一年も売れないなどということがあるのだろうか。いいものが、見る間に売れていく店なのに。
 オヤジに聞くと、彼も不思議そうに言った。
「この一年は、決していい年ではなかったのですが、それにしても……」
 それにしても、この逸品が一年も売れないでいたのはほとんど奇跡的である。
 僕は迷わず、これを買うことにした。ラクシュミが、一年も僕を待っていてくれたのだ。


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