ルルドに行くときのもう一つの楽しみは、
大切な人たちの住所を忘れずに持っていくことから始まる。
なぜなら……
ルルドから直接、世界中に水を送れるのである。
日本で、お世話になっている人、
感謝の気持ちを表したい人には、日本でさまざまなことができる。
デパートからお中元を送ったり、
年賀状や、その他のお便りを送ったり……。
しかし、遠くフランスの地から、
ある日突然聖なる水が送られてきたときの驚きと喜びは何ものにも代え難く、
それはまた、贈るほうも同じだ。
こうしてポカラの大木神父には毎年水を送ったが、
しかし神父から礼状が来たりすることはない。
ルルドに入る前、トゥールーズで発見した、
私たち共通の洗礼名の聖者トマス・アクィナスの墓のことを手紙に書いたときも、
創設した「マリアの奨学金」のことを相談したときも、
お返事がくることはなかった。
最初はちょっとお返事を期待したりもしたものだが、
少し考えてみれば、一人で何役もこなす神父の時間とはそうしたものなので、
まったく気にしない。
翻って、神父ほど忙しくないはずの私自身も、
たまにどうしても、皆さんからいただいたお便りにお返事洩れがあることがあり、
この場を借りてちゃっかりお詫びしたいと思う次第。