「シスターに何か質問したらどう?」
フリオに促されたが、急には何も浮かばない。
「シスター・ルチアはお元気ですか?」
ありきたりのことを思わず口走ると、「足のリウマチがありますが、大変元気です」という丁寧な答えが返ってきた。
「ルチア様にお手紙を書くことはできるのですか?」
この問いに、シスターはこう答えた。
「いいですよ。この紙に書いてください」
時間を無駄にはできない。手渡された紙に、ぼくは必死で思いをつづった。日本で、ルルドやファティマを主題にした本を書いたこと。日本人の多くは特定の宗教を持たないが、敬虔な民族であること。日本と、真実に対する私の使命のために、どうか祈ってほしいこと……。
1917年に聖母マリアをその目で見、ファティマの預言を語ったあのルチアが、本当にこれを読んでくれるのか……。だがそのとき、ぼくは“背筋の凍るような”発言を背後で聞いた。
ファティマの聖母像