先輩 4


ただ、私のとなりは人当たりよく品のいい大学の先生、反対側のとなりは東京交響楽団の常任指揮者である大友直人さんと夕海(ゆみ)夫人だったので、助かった。
日本人離れした容姿の夕海さんにはイギリス人の血が流れているが、実は現在の英王室とは縁戚に当たるなどという、結婚にちなんだ話題で局所的に盛り上がったのだった。
ところで、披露宴なのだから、当然、スピーチや余興が登場する。社会的に偉い人たちというのはどういうスピーチをするのか興味津々だったが、彼らはどうも、あまり美辞麗句を用いないようだ。ポイントを比較的ストレートに、しかし粋な表現で語る。だからこそ皆さん、経済界において成功されるのかと少し納得がいった。
また、新婦の友人は何人かで歌を歌い、フルート奏者である新婦自身も演奏を披露されたが、誰一人として緊張しているふうではなかった。
こういう場に慣れている人びとが、この世の中に存在するのか……。新郎が世界中で収集してきたという高そうなワインが次々開けられるなか、私はそんなことを思い絶句した。


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